1 論文式試験問題集
2 [民法・商法・民事訴訟法]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 法]
9
10 次の文章を読んで、
11 後記の〔設問1・〕及び〔設問2・〕に答えなさい。
12
13
14 解答に当たっては、
15 文中において特定されている日時にかかわらず、
16 令和6年1月1日現在にお
17 いて施行されている法令に基づいて答えなさい。
18
19 なお、
20 民法以外の法令の適用について検討する必
21 要はない。
22
23
24 【事実T】
25 1.Aが機関長として搭乗するタンカー甲は、
26 令和3年4月1日、
27 太平洋上で消息を絶った。
28
29 令和
30 4年6月22日、
31 甲の船体の一部が洋上を漂流しているところを発見され、
32 調査の結果、
33 甲は、
34
35 令和3年4月1日未明に発生した船舶火災によって沈没したことが明らかになった。
36
37 同じ頃、
38
39 の乗組員数名の遺体及び所持品の一部が発見されたが、
40 Aの遺体は含まれていなかった。
41
42
43 2.Aの推定相続人は、
44 子B及び子Cである。
45
46 Aは、
47 乙土地(時価2000万円相当)を所有して
48 いるが、
49 そのほかに見るべき財産はない。
50
51
52 3.令和4年6月23日、
53 Bは、
54 Aについて管轄の家庭裁判所に失踪の宣告を請求し、
55 同年8月1
56 日、
57 失踪の宣告がされた。
58
59
60 【事実U】
61 前記【事実T】の1から3までに加えて、
62 以下の事実があった。
63
64
65 4.Aは、
66 平成30年4月1日、
67 以下の内容の自筆証書遺言に係る同日付遺言書(以下「本件遺言
68 書」という。
69
70 )を適法に作成し、
71 封筒に入れて厳封した上で、
72 自室の机の引出しに入れておい
73 た。
74
75
76
77
78
79 乙土地をCに相続させる。
80
81
82
83 前項に記載以外の財産は、
84 各相続人の法定相続分に従って相続させる。
85
86
87 5.令和4年8月24日、
88 Bは、
89 遺産分割協議書等の必要な書類を偽造して、
90 乙土地について相続
91 を原因とする自己への所有権移転登記手続をした。
92
93 その上で、
94 Bは、
95 Dに対して、
96 同月25
97 日、
98 乙土地を代金2000万円で売り渡し、
99 その旨の登記がされた。
100
101 Dは、
102 現在も乙土地を占有
103 している。
104
105
106 6.令和4年8月30日、
107 CがAの部屋を片付けていたところ、
108 机の引出しから本件遺言書を発見
109 し、
110 これを管轄の家庭裁判所に提出して検認を請求し、
111 同年9月14日、
112 適法に検認が行われ
113 た。
114
115
116 〔設問1〕
117 【事実T】及び【事実U】(1から6まで)を前提として、
118 Cは、
119 Dに対して、
120 所有権に基づ
121 き、
122 乙土地の明渡しを請求した。
123
124 Dからの反論にも言及しつつ、
125 Cの請求が認められるかについて
126 論じなさい。
127
128
129 【事実V】
130 前記【事実T】の1から3までに加えて、
131 以下の事実があった(前記【事実U】の4から6まで
132 は存在しなかったものとする。
133
134 )。
135
136
137 7.Aは甲の沈没後に外国漁船によって救出されていたが、
138 諸般の事情から帰国できないでいた。
139
140
141 Aは、
142 令和4年8月5日頃、
143 Bに電話をして無事を伝えたが、
144 Bは、
145 Aの滞在する地域の情勢等
146 から帰国は困難であると判断し、
147 友人Fに、
148 Aは生存しているものの帰国は困難であることを伝
149 え、
150 その財産の処分について相談したほかは、
151 この事実を誰にも話さずに秘匿していた。
152
153 Aの滞
154
155 - 2 -
156
157 在する地域は外国との通信が厳しく制限されており、
158 前記の電話のほかにAの生存を伝えるもの
159 はなかった。
160
161
162 8.令和4年8月24日、
163 Cは、
164 適法に相続放棄の申述を行った。
165
166 同月25日、
167 乙土地について、
168
169 相続を原因とするAからBへの所有権移転登記がされた。
170
171 同年10月20日、
172 Bは、
173 Aの生存を
174 知らない不動産業者Eに対して、
175 代金2000万円で乙土地を売り渡し、
176 その旨の登記がされ
177 た。
178
179 その際、
180 Bは、
181 Eに対して、
182 「ひょっとしたら1年後くらいに1割増しで買い戻すかもしれ
183 ないので、
184 その間は他の人に処分しないでほしい。
185
186 」と申し向けていた。
187
188
189 9.令和5年6月19日、
190 Eは、
191 Fから「Bから乙土地の買戻しの話は聞いていると思うが、
192 今の
193 ところ、
194 Bには十分な資金がない。
195
196 そこで、
197 Bと話し合った上で、
198 私が乙土地を購入することに
199 なった。
200
201 」と聞き、
202 Bにも確認した上で、
203 Fに対して、
204 乙土地を代金2200万円で売り渡し、
205
206 その旨の登記がされた。
207
208 Fは、
209 現在も乙土地を占有している。
210
211
212 10.Aは、
213 令和5年6月24日、
214 住所地に帰来した。
215
216 その後、
217 Aの請求を受けた管轄の家庭裁判所
218 は、
219 Aの失踪の宣告を取り消した。
220
221
222 〔設問1〕
223 【事実T】及び【事実V】(1から3まで及び7から10まで)を前提として、
224 Aは、
225 Fに対し
226 て、
227 所有権に基づき、
228 乙土地の明渡しを請求した。
229
230 Fの反論にも言及しつつ、
231 Aの請求が認められ
232 るかについて論じなさい。
233
234
235 【事実W】
236 11.Gは、
237 令和6年3月1日、
238 取引関係にあるHに対する500万円の支払債務を弁済する目的
239 で、
240 取引銀行であるI銀行に、
241 500万円の振込依頼をしたが、
242 その際、
243 振込先として、
244 誤っ
245 て、
246 K銀行のH名義ではなくJ名義の普通預金口座(以下「J名義口座」という。
247
248 )を指定して
249 しまった。
250
251 K銀行は、
252 I銀行からの振込依頼を受け、
253 K銀行のJ名義口座に500万円の入金処
254 理を行った(以下「本件誤振込み」という。
255
256 )。
257
258 なお、
259 Jは、
260 G及びHとは何ら関係のない人物
261 である。
262
263
264 12.Gは、
265 令和6年3月7日、
266 Hから入金がない旨の連絡を受け、
267 本件誤振込みに気付いた。
268
269
270 Gは、
271 直ちにI銀行に連絡し、
272 J名義口座への振込依頼は誤りであり、
273 Jとの間に振込みの原
274 因となる関係はないので、
275 J名義口座に入金された500万円を戻してほしい旨申し出た。
276
277 I銀
278 行は、
279 直ちに、
280 K銀行に返還を求めた。
281
282
283 13.一般に、
284 銀行実務では、
285 振込先の口座を誤って振込依頼をした振込依頼人からの申出があれ
286 ば、
287 受取人の預金口座への入金処理が完了している場合であっても、
288 受取人の承諾を得て振込依
289 頼前の状態に戻す、
290 組戻しという手続が執られている。
291
292
293 14.令和6年3月8日午前10時、
294 K銀行は、
295 Jに組戻しの承諾を得ることとし、
296 K銀行の担当者
297 がJに電話を架け、
298 応答したJに対し、
299 Gからの500万円の振込みについて、
300 Gは誤振込みで
301 あるとして、
302 組戻しを求めている旨説明し、
303 その承諾を求めた。
304
305 これに対し、
306 Jは、
307 Gから50
308 0万円を振り込まれる理由は確かにすぐには思い当たらないが、
309 よく考えたい、
310 組戻しの承諾を
311 するかどうかについては検討して後日連絡する旨述べた。
312
313 しかし、
314 その後、
315 Jは、
316 K銀行に連絡
317 をすることなく、
318 K銀行の担当者の問合せにも応じなくなった。
319
320
321 〔設問2〕
322 【事実W】(11から14まで)を前提として、
323 Gが、
324 Jに対して500万円の不当利得の返還を求
325 めた場合に、
326 その請求が認められるかについて論じなさい。
327
328 なお、
329 J名義口座からは、
330 本件誤振込
331 みの後、
332 出金は行われていないものとする。
333
334
335
336 - 3 -
337
338 【事実X】
339 前記【事実W】の11から14までに加えて、
340 次の事実があった。
341
342
343 15.令和6年3月8日夜、
344 Jは、
345 債権者の一人である知人Lに対して、
346 現金で500万円の弁済を
347 していた。
348
349 Lによると、
350 Jは同日午後8時頃に、
351 突然Lの自宅を訪れ、
352 Lに対して負う債務の弁
353 済が遅れたことをわび、
354 弁済に充ててほしいと現金500万円を置いていった。
355
356 Lが弁済金の出
357 所を尋ねたところ、
358 Jは、
359 自分の銀行口座に誤って振り込まれた金銭である旨を説明した。
360
361 Lは
362 迷ったが、
363 結局これをJに対して有する債権の弁済として受け取った。
364
365
366 16.K銀行は、
367 【事実W】14のとおり、
368 令和6年3月8日午前10時にJに組戻しの承諾を得るべ
369 く連絡をしていたが、
370 K銀行の担当者は、
371 J名義口座について取引を一時的に停止するなどの措
372 置を採ることをしていなかった。
373
374 同日午後1時、
375 Jは、
376 同口座から現金500万円の払戻しを受
377 けており、
378 それにより同口座の残高は0円となっていた。
379
380 同口座は、
381 ここ数年間残高は0円であ
382 って、
383 本件振込み及びその払戻しを除き、
384 入出金は行われていなかった。
385
386
387 17.Gは、
388 Lに対して、
389 JがLに支払った現金500万円は本件誤振込みにより送金された500
390 万円を払い戻したものであるとして、
391 不当利得返還請求権に基づき、
392 500万円の返還を求め
393 た。
394
395 これに対してLは、
396 @Lの利得はJの一般財産からの弁済であるから、
397 Gの損失との間には
398 因果関係がないこと、
399 ALの利得はJに対する債権の弁済の受領であり、
400 法律上の原因があるこ
401 とを理由として、
402 Gの請求を拒絶した。
403
404
405 〔設問2〕
406 【事実W】及び【事実X】(11から17)までを前提として、
407 GのLに対する不当利得返還請求が
408 認められるかについて、
409 Lの反論@及びAに留意しつつ論じなさい。
410
411
412
413 - 4 -
414
415 [商
416
417 法]
418
419 次の文章を読んで、
420 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
421
422
423 1.甲株式会社(以下「甲社」という。
424
425 )は、
426 住宅用インテリアの企画、
427 製造、
428 販売等を業とする大
429 会社でない取締役会設置会社であり、
430 会計監査人設置会社でない監査役設置会社である。
431
432 甲社の定
433 款には、
434 その発行する全部の株式の内容として譲渡による当該株式の取得について取締役会の承認
435 を要すること、
436 定時株主総会の議決権の基準日は毎年12月31日とすること、
437 事業年度は毎年1
438 月1日から12月31日までの1年とすることが定められている。
439
440 甲社の発行済株式の総数は10
441 00株であり、
442 令和5年12月31日の株主名簿によれば、
443 創業者であるAが500株を、
444 BとC
445 が150株ずつを、
446 Aの親族であるDとEが100株ずつを、
447 それぞれ保有していた。
448
449 甲社の創業
450 以来、
451 Aが代表取締役を、
452 BとCが取締役を、
453 Fが監査役を、
454 それぞれ務め、
455 DとEは甲社の日常
456 の経営に関わっていない。
457
458
459 2.Dは、
460 令和6年2月頃、
461 その保有する甲社の株式の全部(以下「本件株式」という。
462
463 )を売却し
464 て家計の足しにしたいとAに相談した。
465
466 Aは、
467 甲社が同年3月31日に本件株式を1株当たり1
468 0万円(総額1000万円)で買い取ることとし、
469 同月開催予定の甲社の定時株主総会におい
470 て、
471 そのことを取り上げるとDに約束した。
472
473
474 3.甲社は、
475 会社法上必要な手続を経て、
476 令和6年3月31日に、
477 Dから、
478 本件株式を総額1000
479 万円で買い取った。
480
481 その過程で、
482 Aは、
483 同月に開催された甲社の定時株主総会において、
484 「本総
485 会において適法に確定した計算書類に基づいて計算したところ、
486 令和6年3月31日における分
487 配可能額は1200万円以上あり、
488 甲社が本件株式を買い取ることに問題はない。
489
490 」と説明し、
491
492 甲社による本件株式の取得の承認を受けた。
493
494
495 4.ところが、
496 令和6年7月になって、
497 甲社の預金口座の記録を照会していたBが上記3の計算書類
498 の基礎となった令和5年中の会計帳簿に過誤があったことを偶然発見した。
499
500 当該過誤は、
501 甲社に
502 おいて会計帳簿をほぼ単独で作成していた経理担当従業員Gが、
503 一部の取引について会計帳簿へ
504 の記載を失念したために発生したものであった。
505
506 Fによる会計監査は、
507 例年、
508 会計帳簿が適正に
509 作成されたことを前提として計算書類と会計帳簿の内容の照合を行うのみであったため、
510 会計監
511 査では当該過誤が発見されず、
512 上記3の定時株主総会においても、
513 Fは疑義を述べなかった。
514
515
516 は、
517 甲社の経理及び財務を担当しており、
518 計算書類の作成と分配可能額の計算も自分で行ってい
519 たが、
520 その基礎となる会計帳簿の作成については直属の部下であるGに任せきりにして関与して
521 おらず、
522 Gによる一部の取引についての会計帳簿への記載の失念に気付かなかった。
523
524 当該過誤を
525 修正したところ、
526 令和6年3月31日における分配可能額は800万円であった。
527
528
529 〔設問1〕
530 上記1から4までを前提として、
531 次の及びに答えなさい。
532
533 なお、
534 本件株式の取得価格は適正
535 な金額であったものとする。
536
537
538
539
540
541 甲社による本件株式の買取りは有効かについて、
542 論じなさい。
543
544
545 甲社による本件株式の買取りに関して、
546 A、
547 D及びFは、
548 甲社に対し、
549 会社法上どのような責
550 任を負うかについて、
551 論じなさい。
552
553
554 下記5以下においては、
555 上記2から4までの事実は存在しないことを前提として、
556 〔設問2〕に
557
558 答えなさい。
559
560
561 5.Aは、
562 令和6年5月頃、
563 とある同族企業の社長から、
564 親族である株主が死亡するたびに株式が多
565
566 - 5 -
567
568 数の相続人に分散したために会社の管理が厄介になったという話を聞いて心配になり、
569 全ての甲社
570 の株式を自分の手元で保有したいと考えるようになった。
571
572 AがB、
573 C、
574 D及びEに個別に相談した
575 ところ、
576 B、
577 C及びDは対価次第で甲社の株式の売却に応じると回答したが、
578 Eは「長年にわたり
579 株主であった自分を、
580 さしたる理由もなく甲社から排除しようというのか。
581
582 」と不満を強く述べ、
583
584 売却を固く拒否した。
585
586
587 6.Aは、
588 旧知の税理士Hに甲社の株式の評価額の算定を依頼し、
589 「1株当たり6万円から10万円
590 までの範囲が甲社の株式の適正な評価額である。
591
592 」との意見を得た。
593
594 そこで、
595 Aは、
596 令和6年7月
597 31日までに、
598 甲社の取締役会の承認を受け、
599 B、
600 C及びDから、
601 その保有する甲社の株式を1株
602 当たり10万円で適法に取得し、
603 当該株式について、
604 株主名簿の名義書換が行われた。
605
606 他方、
607
608 は、
609 同年8月以降、
610 Eに対し、
611 特別支配株主の株式等売渡請求(以下「本件売渡請求」という。
612
613
614 をすることとし、
615 甲社に対し、
616 その旨及び株式売渡対価を1株当たり6万円、
617 取得日を同年9月2
618 0日とすることなどの会社法所定の事項を通知し、
619 同年8月20日開催の甲社の取締役会におい
620 て、
621 その承認を受けた。
622
623 甲社は、
624 同月27日に、
625 会社法所定の事項をEに通知し、
626 また、
627 本件売渡
628 請求に関する事項を記載した会社法所定の書面を甲社本店に備え置いた。
629
630 その通知を受けたEは、
631
632 Aの都合で一方的に甲社から排除されることに不満を強く抱き、
633 さらに、
634 B、
635 C及びDからの株式
636 の取得の事実を知り、
637 その取得価格が本件売渡請求における株式売渡対価の額と異なることに対し
638 て不満を一層強めた。
639
640
641 〔設問2〕
642 令和6年9月2日時点において、
643 Eの立場において会社法上どのような手段を採ることが考えら
644 れるかについて、
645 論じなさい。
646
647
648
649 - 6 -
650
651 [民事訴訟法](〔設問1〕と〔設問2〕の配点の割合は、
652 1:1)
653 次の文章を読んで、
654 後記の〔設問1〕及び〔設問2〕に答えなさい。
655
656
657 【事例】
658 Xは、
659 伝統工芸品の製作を手掛けている芸術家である。
660
661 Yは、
662 Xの製作活動を支援しており、
663 Aを代
664 理人として、
665 Xの工芸品を頻繁に購入していた。
666
667
668 Xは、
669 新作の工芸品が完成した旨をAに伝えたところ、
670 Yが300万円で購入を希望しているとAか
671 ら聞いた。
672
673 そこで、
674 Xは、
675 いつものようにAを通じて、
676 新作の工芸品を300万円でYに売り渡した
677 (以下、
678 この契約を「本件契約」といい、
679 本件契約の売買代金を「本件代金」という。
680
681 )。
682
683 しかし、
684
685 件代金が支払われないので、
686 XがYに事情を直接聞いたところ、
687 Yは、
688 Xに対し、
689 Aから新作の工芸品
690 の話など聞いたことはなく、
691 Aにその購入を依頼した覚えもないことから、
692 本件代金を支払うつもりは
693 ないと答えた。
694
695 また、
696 Yは、
697 Xに対し、
698 現在、
699 Aとは連絡が取れなくなっていることも伝えた。
700
701 その
702 後、
703 Xは、
704 弁護士L1を訴訟代理人として、
705 Yに対し、
706 本件代金300万円の支払を求める訴えを提起
707 した(以下「本件訴訟」という。
708
709 )。
710
711 これに対して、
712 Yは、
713 弁護士L2を訴訟代理人として本件訴訟に
714 応訴し、
715 XY間の本件契約の成立を争った。
716
717 弁論準備手続における争点整理の結果、
718 本件訴訟において
719 は、
720 本件契約における代理権の授与の有無及び表見代理の成否が主要な争点となった。
721
722
723 〔設問1〕
724 弁論準備手続終結後の人証調べは、
725 前記の争点について行われた。
726
727 結審が予定されていたその後の口
728 頭弁論期日において、
729 L2は、
730 YがXに対して有する貸金債権300万円(弁済期は本件訴訟の提起前
731 に既に到来していた。
732
733 )を自働債権とし、
734 本件代金に係る債権を受働債権として、
735 対当額で相殺する旨
736 の相殺の抗弁を新たに主張した。
737
738 L1がL2に対して、
739 相殺の抗弁を弁論準備手続の終結前に主張する
740 ことができなかった理由について説明を求めたところ、
741 L2は、
742 「相殺の抗弁は自己の債権を犠牲にす
743 るものであるから、
744 初めから主張する必要はないと考えていた。
745
746 」と述べるとともに、
747 「相殺権の行使
748 時期には法律上特段の制約がなく、
749 判例によれば、
750 基準時後に相殺権を行使したことを請求異議の訴え
751 の異議事由とすることも許容されている以上、
752 弁論準備手続の終結後に相殺の抗弁を主張することも許
753 容されるべきである。
754
755 」と述べた。
756
757 L1は、
758 本件訴訟の開始前から相殺適状になっており、
759 仮定的抗弁
760 として主張することができたにもかかわらず、
761 それをしなかった理由について更に説明を求めたが、
762
763 2からは前記の説明以上の具体的な説明はされなかった。
764
765 そこで、
766 L1は、
767 相殺の抗弁は時機に後れた
768 攻撃防御方法に当たるとして、
769 その却下を求めた。
770
771
772 この場合において、
773 裁判所は相殺の抗弁を却下すべきかについて、
774 検討しなさい。
775
776
777 〔設問2〕(〔設問1〕の問題文中に記載した事実は考慮しない。
778
779
780 主要な争点が明らかになったため、
781 Xは、
782 Aに訴訟告知をした。
783
784 しかし、
785 Aは、
786 本件訴訟に参加しな
787 かった。
788
789 その後、
790 本件訴訟では、
791 弁論準備手続が終結し、
792 人証調べが行われた。
793
794 その結果、
795 YはAに代
796 理権を授与しておらず、
797 また、
798 表見代理の成立は認められないことを理由として、
799 Xの請求を棄却する
800 との判決がされた(以下「前訴判決」という。
801
802 )。
803
804
805 前訴判決の確定後、
806 Xは、
807 Aは無権代理人としての責任を負うとして、
808 Aに対して本件代金300万
809 円の支払を求める訴えを提起した(以下「後訴」という。
810
811 )。
812
813 これに対して、
814 Aは、
815 応訴し、
816 AはYか
817 ら代理権を授与されていたと主張した。
818
819
820 Xは、
821 上記のようなAの主張は訴訟告知の効果によって排斥されるべきであると考えている。
822
823 Xの立
824 場から、
825 Aの主張を排斥する立論を、
826 判例を踏まえて、
827 展開しなさい。
828
829 なお、
830 解答に当たっては、
831 Aが
832 補助参加の利益を有していたことを前提として論じなさい。
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