1 論文式試験問題集
2 [法律実務基礎科目(民事・刑事)]
3
4 - 1 -
5
6 [民
7
8 事]
9
10 司法試験予備試験用法文を適宜参照して、
11 以下の各設問に答えなさい。
12
13 ただし、
14 XのYに対す
15 る金銭債権に係る請求については検討する必要がない。
16
17
18 以下の設問中に「別紙」において定義した略語を用いることがある。
19
20
21 〔設問1〕
22 別紙1【Xの相談内容】は、
23 弁護士PがXから受けた相談内容を記載したものである。
24
25 弁護士
26 Pは、
27 令和6年7月5日、
28 別紙1【Xの相談内容】を前提に、
29 Xの訴訟代理人として、
30 Yに対し、
31
32 本件建物の収去及び本件土地の明渡しを求める訴訟(以下「本件訴訟」という。
33
34 )を提起すること
35 とし、
36 本件訴訟における訴状(以下「本件訴状」という。
37
38 )を作成し、
39 裁判所に提出した。
40
41
42 これに対し、
43 弁護士Qは、
44 本件訴状の送達を受けたY(代表取締役A)から別紙1【Y(代表
45 取締役A)の相談内容】のとおり相談を受け、
46 Yの訴訟代理人として本件訴訟を追行することにし
47 た。
48
49
50 以上を前提に、
51 以下の各問いに答えなさい。
52
53
54
55
56 弁護士Pが、
57 本件訴訟において、
58 選択すると考えられる訴訟物を記載しなさい。
59
60
61
62
63
64 弁護士Pが、
65 本件訴状において記載すべき請求の趣旨(民事訴訟法第134条第2項第2号)
66 を記載しなさい。
67
68 なお、
69 付随的申立てについては、
70 考慮する必要がない。
71
72
73
74
75
76 弁護士Pが、
77 本件訴状において記載すべき請求を理由づける事実(民事訴訟規則第53条第1
78 項。
79
80 以下同じ。
81
82 )を記載しなさい。
83
84 解答に当たっては、
85 本件訴訟において、
86 Yが、
87 別紙1【Y
88 (代表取締役A)の相談内容】に沿って認否することを前提とすること。
89
90 なお、
91 いわゆるよっ
92 て書き(請求原因の最後のまとめとして、
93 訴訟物を明示するとともに、
94 請求の趣旨と請求原因
95 の記載との結びつきを明らかにするもの)は記載しないこと。
96
97
98
99
100
101 弁護士Qは、
102 別紙1【Y(代表取締役A)の相談内容】(a)を前提に、
103 本件訴訟の答弁書
104 (以下「本件答弁書」という。
105
106 )を作成した。
107
108 弁護士Qが本件答弁書において抗弁として記載
109 すべき具体的事実を記載しなさい。
110
111
112
113 〔設問2〕
114 第1回口頭弁論期日において、
115 本件訴状及び本件答弁書が陳述され、
116 弁護士P及び弁護士Q
117 は、
118 それぞれ、
119 次回期日である第1回弁論準備手続期日までに準備書面を作成することとなった。
120
121
122
123
124 弁護士Pは、
125 別紙1【Xの相談内容】の下線部の(@)及び(A)の各言い分について、
126 再抗
127 弁として主張すべきか否かを検討している。
128
129 弁護士Pが、
130 上記(@)及び(A)の各言い分に
131 ついて、
132 それぞれ、
133 @再抗弁として主張すべきか否かの結論を記載するとともに、
134 A(a)再
135 抗弁として主張すべき場合には、
136 再抗弁を構成する具体的事実を記載し、
137 (b)再抗弁として
138 主張しない場合には、
139 その理由を説明しなさい。
140
141
142
143
144
145 弁護士Qは、
146 弁護士Pから再抗弁を記載した準備書面(以下「原告準備書面」という。
147
148 )が提
149 出されたことを受けて、
150 別紙1【Y(代表取締役A)の相談内容】(b)を前提に、
151 以下のよ
152 うな再々抗弁を記載した準備書面(以下「被告準備書面」という。
153
154 )を作成した。
155
156
157 (ア)
158
159 Aは、
160 Xに対し、
161 令和4年11月9日、
162 アンティーク腕時計(本件商品)を代金20
163
164 0万円で売った。
165
166
167 (イ)
168
169 〔
170
171 〕
172
173 (ウ)
174
175 Aは、
176 Xに対し、
177 令和6年3月20日、
178 (ア)の代金債権をもって、
179 本件延滞賃料と
180
181 対当額で相殺する旨の意思表示をした。
182
183
184 @上記〔
185
186 〕に入る具体的事実を記載するとともに、
187 Aその事実を主張した理由を簡潔
188
189 - 2 -
190
191 に説明しなさい。
192
193
194 〔設問3〕
195 第1回弁論準備手続期日において、
196 原告準備書面及び被告準備書面が陳述され、
197 弁護士Pは、
198
199 次回期日である第2回弁論準備手続期日までに準備書面を作成することとなった。
200
201
202 その後、
203 弁護士Pは、
204 Xから更に別紙1【Xからの聴取内容】のとおりの事情を聴取した。
205
206
207 これを前提に、
208 以下の各問いに答えなさい。
209
210
211
212
213 弁護士Pは、
214 別紙1【Xからの聴取内容】を前提に、
215 被告準備書面の再々抗弁に対し、
216 再々々
217 抗弁として、
218 以下の各事実を主張することにした。
219
220
221 (あ)
222
223 Xが、
224 Aに対し、
225 令和5年3月23日、
226 代金200万円とした本件商品の代金額につ
227
228 き、
229 50万円とするよう申し入れ、
230 XとAとの間で上記代金額につき争いがあった。
231
232
233 (い)
234
235 XとAは、
236 上記(あ)につき互いに譲歩し、
237 令和5年4月10日、
238 本件商品の売買代
239
240 金債権総額を100万円に減額する旨の和解をした。
241
242
243 (う)
244
245 〔
246
247 @上記〔
248
249 〕
250 〕に入る具体的事実を記載するとともに、
251 A上記(あ)及び(い)の事実に
252
253 加えて、
254 上記(う)の事実を主張すべきと考えた理由につき、
255 和解契約の法律効果について触
256 れた上で、
257 簡潔に説明しなさい。
258
259
260
261
262 第2回弁論準備手続期日において、
263 弁護士Pは、
264 上記のとおり再々々抗弁を記載した準備書
265 面を陳述し、
266 弁護士Qは、
267 再々々抗弁事実のうち上記(い)の事実(以下「本件事実」とい
268 う。
269
270 )につき「否認する。
271
272 X主張の和解合意をした事実はない。
273
274 」と述べた。
275
276
277 同期日において、
278 弁護士Pは、
279 本件事実を立証するため、
280 別紙2の和解合意書(以下「本件
281 合意書」という。
282
283 )を提出し、
284 書証として取り調べられた。
285
286 これに対し、
287 弁護士Qは、
288 本件合
289 意書のうちA作成部分の成立の真正について「否認する」との陳述をした。
290
291
292 (@)
293
294 裁判所は、
295 本件合意書のA作成部分の成立の真正について判断するに当たり、
296 弁護士
297
298 Qにどのような事項を確認すべきか。
299
300 @結論を答えた上で、
301 Aその理由を簡潔に説明し
302 なさい。
303
304
305 (A)
306
307 弁護士Pは、
308 本件事実を立証するに当たり、
309 今後どのような訴訟活動をすることが考
310
311 えられるか。
312
313 証拠構造や本証・反証の別を意識し、
314 上記(@)で裁判所が確認した事項
315 に対する弁護士Qの回答により場合分けした上で簡潔に説明しなさい。
316
317
318 〔設問4〕
319 仮に、
320 本件訴訟の口頭弁論が令和6年11月5日に終結し、
321 同年12月3日、
322 Xの請求を全部
323 認容する判決が言い渡され、
324 その後、
325 同判決が確定したとする(以下、
326 この確定した判決を「本件
327 確定判決」という。
328
329 )。
330
331 しかし、
332 Yが本件建物の収去及び本件土地の明渡しをしないため、
333 Xが、
334
335 本件確定判決に基づき、
336 強制執行の申立てをしようとしたところ、
337 本件建物の所有権が同年10月
338 14日にYからZに移転していたことが判明したとする。
339
340
341 この場合、
342 @Xが強制執行を申し立てるに当たって、
343 どのような不都合が生じるか、
344 Aその不
345 都合を防ぐために、
346 Xがあらかじめ採るべきであった法的手段は何か、
347 それぞれ簡潔に説明しなさ
348 い。
349
350
351
352 - 3 -
353
354 (別紙1)
355 【Xの相談内容】
356 「私は、
357 令和2年7月1日、
358 Aに対し、
359 店舗用建物を所有する目的で、
360 私所有の土地(以下「本
361 件土地」という。
362
363 )を、
364 賃料月額10万円、
365 毎月末日に翌月分払い、
366 期間30年間の約束で賃貸し
367 ました(以下「本件賃貸借契約」という。
368
369 )。
370
371
372 Aは、
373 令和2年8月中には、
374 本件土地上に店舗用建物(以下「本件建物」という。
375
376 )を建て
377 て、
378 本件建物で高級腕時計の販売を始めました。
379
380 Aは、
381 令和5年3月17日、
382 本件建物の所有権を
383 現物出資し、
384 時計等の販売を目的とする株式会社Yを設立して自ら代表取締役に就任し、
385 同日、
386 Y
387 に対し、
388 本件建物の所有権移転登記をしました。
389
390 そして、
391 Aは、
392 私が承諾していないにもかかわら
393 ず、
394 同日、
395 Yに対し、
396 本件土地を賃貸しました(以下「本件転貸借契約」という。
397
398 )。
399
400 以後、
401 Yが
402 本件建物を店舗として利用しています。
403
404 私は、
405 Aに対し、
406 本件転貸借契約について抗議するつもり
407 でしたが、
408 同年5月10日、
409 Aは脳梗塞で倒れて入院してしまい、
410 それ以降、
411 賃料が支払われなく
412 なりました。
413
414
415 私は、
416 Aの体調が回復したことから、
417 Aに対し、
418 令和6年3月7日、
419 令和5年6月分から令和
420 6年3月分までの10か月分の延滞賃料100万円(以下「本件延滞賃料」という。
421
422 )の支払を2
423 週間以内にするように求めましたが、
424 Aは支払おうとしません。
425
426
427 私は、
428 本件延滞賃料に関するAとの話合いは諦め、
429 Aに対し、
430 令和6年3月31日到達の内容
431 証明郵便をもって、
432 (@)賃料不払を理由として本件賃貸借契約を解除するとともに、
433 (A)本件
434 土地の無断転貸を理由として本件賃貸借契約を解除しました。
435
436 Yは、
437 何ら正当な権原がなく本件建
438 物を所有して本件土地を占有していますので、
439 Yに対し、
440 本件建物の収去及び本件土地の明渡しを
441 求めたいと思います。
442
443 」
444 【Y(代表取締役A)の相談内容】
445 「(a)Xは、
446 令和2年7月1日、
447 私(A)に対し、
448 店舗用建物を所有する目的で、
449 本件土地を
450 賃料月額10万円、
451 毎月末日に翌月分払い、
452 期間30年間の約束で賃貸して(本件賃貸借契約)、
453
454 これに基づいて本件土地を引き渡しました。
455
456 その後、
457 私(A)は、
458 令和2年8月に本件土地上に本
459 件建物を建て、
460 同所で腕時計販売店を経営していましたが、
461 令和5年3月17日、
462 本件建物の所有
463 権を現物出資して、
464 時計等の販売を目的とする当社(Y)を設立するとともに、
465 同日、
466 当社(Y)
467 に対し、
468 賃貸期間の定めなく、
469 賃料月額10万円で本件土地を賃貸し(本件転貸借契約)、
470 これに
471 基づいて本件土地を引き渡しました。
472
473 しかし、
474 Xは、
475 令和6年3月31日到達の内容証明郵便で本
476 件賃貸借契約を解除すると伝えてきました。
477
478 Xは、
479 本件賃貸借契約の解除の理由として、
480 私(A)
481 から当社(Y)への本件土地の無断転貸を挙げていますが、
482 個人で腕時計販売店をしていた私
483 (A)が、
484 全額を出資し、
485 腕時計販売を目的とする当社(Y)を設立して、
486 自ら代表取締役に就任
487 したものであり、
488 当社(Y)には他の役員や従業員はおらず、
489 本件建物は引き続き腕時計販売店と
490 して使用し、
491 私(A)一人で営業に当たっていたのですから、
492 Xには何も迷惑をかけていません。
493
494
495 Xが本件土地を所有していることや、
496 当社(Y)が本件建物を所有していることは事実ですが、
497 上
498 記の解除の主張は不当であり、
499 当社(Y)はXに本件土地を明け渡す義務はないと思います。
500
501
502 (b)また、
503 私(A)は、
504 Xに対し、
505 令和4年11月9日、
506 アンティーク腕時計(以下「本件商
507 品」という。
508
509 )を代金200万円とし、
510 うち100万円を契約日に支払い、
511 残りの100万円は令
512 和5年5月9日限り私(A)の口座に振り込んで支払う約束で売り、
513 契約日に本件商品を引き渡し
514 ました。
515
516 しかし、
517 Xは契約日に100万円を支払ったものの、
518 残りの代金100万円の支払がなか
519 ったため、
520 私(A)は、
521 Xに対し、
522 令和6年3月20日、
523 この未払代金100万円と本件延滞賃料
524 とを対当額で相殺する旨を電話で伝えました。
525
526 」
527
528 - 4 -
529
530 【Xからの聴取内容】
531 「Yが主張するとおり、
532 私は、
533 Aから、
534 令和4年11月9日、
535 本件商品を代金200万円で購入
536 し、
537 代金のうち100万円をその日に支払いました。
538
539 しかし、
540 私は、
541 本件商品を製造から50年以
542 上が経過したアンティーク商品だと思って200万円で購入したのですが、
543 令和5年3月20日
544 頃、
545 製造年代がAの説明とは異なっており、
546 実際には50万円程度の価値しかないことを知ったの
547 です。
548
549 そのため、
550 私は、
551 Aにだまされたと思い、
552 同月23日、
553 Aに本件商品の代金額を50万円に
554 するよう申し入れました。
555
556 これに対し、
557 Aは当初、
558 本件商品の代金額は200万円が相当だと言っ
559 ていましたが、
560 その後、
561 話し合った結果、
562 同年4月10日、
563 Aとの間で、
564 「本件商品の売買代金債
565 権総額を100万円に減額する」との内容で和解しています(以下「本件和解」という。
566
567 )。
568
569 その
570 後、
571 Aは、
572 令和6年3月20日になって、
573 本件商品の未払代金が残っていることを前提に本件延滞
574 賃料と相殺する旨を伝えてきたのですが、
575 上記のとおり既に本件和解が成立している以上、
576 相殺に
577 は理由がありません。
578
579
580 なお、
581 本件和解については、
582 私がAとの間で和解が成立した令和5年4月10日の当日に作成し
583 た和解合意書(本件合意書)が存在します。
584
585 」
586
587 - 5 -
588
589 (別紙2)
590 (注)
591
592 斜体部分は手書きである。
593
594
595
596 和解合意書
597 1
598
599 甲(A)が、
600 令和4年11月9日、
601 乙(X)に対して、
602 200万円で売却した
603 アンティーク腕時計について、
604 その売買代金額に争いが生じたが、
605 甲と乙は、
606 互
607 いに譲歩した結果、
608 本日、
609 上記腕時計の売買代金債権総額を100万円とするこ
610 とで合意した。
611
612
613 2 なお、
614 乙は、
615 甲に対し、
616 令和4年11月9日、
617 上記腕時計の代金として、
618 10
619 0万円を支払済みである。
620
621
622 (以下略)
623 令和5年4月10日
624 甲(売主)
625 乙(買主)
626
627 - 6 -
628
629 A
630 X
631
632 X印
633
634 [刑
635
636 事]
637
638 次の【事例】を読んで、
639 後記〔設問〕に答えなさい。
640
641
642 【事例】
643 1
644
645 A(25歳)は、
646 甲県乙市内に住む友人X及び乙市の西約30キロメートルにある離島の丙島
647 に住む友人Yを訪ねようと考え、
648 令和6年2月1日、
649 X及びYに電話をかけ、
650 Yに対しては同
651 月3日、
652 Xに対しては同月5日に遊びに行く旨伝えた。
653
654 Aは、
655 同月3日午前10時頃、
656 丙島へ
657 の唯一の交通手段である旅客車両用フェリー(以下「本件フェリー」という。
658
659 )で乙市を出発
660 して丙島に渡り、
661 同日午後1時頃、
662 Tレンタカー丙営業所において、
663 車種を指定して普通乗用
664 自動車1台(登録番号:N300わ7777。
665
666 以下「本件車両」という。
667
668 )を「返却期限は同
669 月4日午後5時、
670 返却場所は同営業所」の契約で借り受けた。
671
672 その際、
673 Aは、
674 同営業所従業員
675 Vから、
676 レンタカー料金3万円は前払いである旨告げられたが、
677 後払いにしてほしい旨懇願
678 し、
679 Vは渋々それを受け入れ、
680 契約書にその旨記載した。
681
682
683 Aは、
684 同月3日午後2時頃、
685 本件車両を運転してY方に赴き、
686 Yと丙島内を観光するなどし
687 た後、
688 同月4日午後4時頃、
689 Yを同人方に送り届け、
690 Yと別れた。
691
692 Aは、
693 その後も本件車両を
694 使用し、
695 返却期限である同日午後5時を過ぎても本件車両を返却しなかった。
696
697 Vは、
698 返却期限
699 になってもAが本件車両を返却しに来ないので、
700 同日午後6時頃、
701 Aの携帯電話に電話をかけ
702 た。
703
704 Aは、
705 その電話で「これから返しに行く。
706
707 」などと言ったが、
708 Vから現在地等を尋ねられ
709 ても何も答えず、
710 一方的に電話を切った。
711
712 その後、
713 VはAに何度も電話をかけたが、
714 Aは電話
715 に出なかった。
716
717 Aは、
718 同日午後6時45分頃、
719 本件車両とともに乙市行きの本件フェリーに乗
720 り込み、
721 同フェリーは同日午後7時に出港した。
722
723
724
725 2
726
727 Aは、
728 同月5日午前10時頃、
729 本件車両を運転して乙市内のX方を訪ね、
730 一緒に観光しようと
731 誘った。
732
733 XがAに「この車どうしたんだ。
734
735 」と聞くと、
736 AはXに「丙島のレンタカー屋で借り
737 た。
738
739 もう期限過ぎてるけどね。
740
741 」と言った。
742
743 XはAに「返さないとだめだよ。
744
745 そんな車で遊び
746 になんか行けないよ。
747
748 」と言ってAの誘いを断ったため、
749 Aは、
750 一人で乙市内を観光するなど
751 していた。
752
753 Vは、
754 同日午後1時頃、
755 Aに電話をかけ、
756 応答したAに居場所を尋ねたところ、
757 A
758 は「今、
759 丙島にいる。
760
761 もう少しで営業所に着く。
762
763 」などと言って一方的に電話を切り、
764 乙市内
765 の観光を続けた。
766
767 Vは、
768 その後も繰り返しAに電話をかけたが、
769 Aが一切電話に出なかったた
770 め、
771 同月7日、
772 本件車両をだまし取られたとして丙警察署に被害届を提出した。
773
774 丙警察署の司
775 法警察員は、
776 詐欺の被疑事実(その要旨は別紙のとおり)で丙簡易裁判所裁判官にAに対する
777 逮捕状を請求し、
778 同月9日、
779 同裁判官から同事実での逮捕状の発付を受けた。
780
781
782 Aは、
783 同月10日午後5時頃、
784 本件車両を運転中、
785 乙市内の公道上でガードレールに衝突す
786 る事故を起こした。
787
788 その際、
789 Aは、
790 運転席側窓ガラスに頭をぶつけて負傷し、
791 本件車両を放置
792 してその場から逃げ去った。
793
794 当該事故の目撃者Wが警察に110番通報し、
795 司法警察員Kらが
796 臨場した。
797
798 Kらは、
799 当該事故車両のナンバーから、
800 詐欺の被害届が出されている本件車両であ
801 ると把握し、
802 @令状の発付を受けずに、
803 本件車両が放置された現場の写真撮影及び本件車両内
804 の証拠品の押収等を行った。
805
806 その結果、
807 本件車両内から、
808 同月3日午前10時乙市発丙島行き
809 及び同月4日午後7時丙島発乙市行きの本件フェリーの乗客用チケットの各半券並びに同月4
810 日午後7時丙島発乙市行きの本件フェリーの車両用チケットの半券を押収したほか、
811 運転席側
812 窓ガラスに付着した血痕を採取した。
813
814 同時に、
815 Kらは、
816 目撃者Wから聴取した運転者の逃走方
817 向へ向かったところ、
818 頭部から出血しているAを現場付近で発見した。
819
820 Kらは、
821 人定事項を確
822 認の上、
823 同月10日、
824 Aを詐欺罪により通常逮捕した。
825
826 Aの逮捕時の所持金は5万円であっ
827 た。
828
829 Aは、
830 逮捕後のKによる弁解録取手続において「レンタカーをだまし取っていない。
831
832 同月
833
834 - 7 -
835
836 4日にVから電話を受けた時、
837 1週間延長してくれと言って承諾してもらった。
838
839 」などと供述
840 した。
841
842 Kは、
843 本件車両内から採取した血痕のDNA型がAのものであるか否かを判別するた
844 め、
845 Aに対し口腔内細胞の提出を求めたが、
846 Aがそれを拒んだことから、
847 A令状の発付を受け
848 た上、
849 医師がAの腕に注射針を挿入して血液を採取した。
850
851
852 3
853
854 同月12日、
855 Aは、
856 詐欺の送致事実(その要旨は別紙に同じ)により甲地方検察庁検察官Pに
857 送致された。
858
859 Aは、
860 Pによる弁解録取手続においてもKによる弁解録取手続時と同様の供述を
861 し、
862 所要の手続を経て、
863 同日中に勾留された。
864
865
866 B検察官Pは、
867 司法警察員Kに対し、
868 本件車両内で発見された本件フェリーのチケットの各
869 半券について、
870 購入日時・場所を解明するよう補充捜査の指示をした。
871
872 捜査の結果、
873 同月3日
874 午前10時乙市発丙島行き及び同月4日午後7時丙島発乙市行きの乗客用チケットは同月2日
875 午後3時頃Aがインターネットで予約購入し、
876 その後窓口で発券されていたのに対し、
877 同月4
878 日午後7時丙島発乙市行きの車両用チケットについては、
879 同月4日午後6時30分頃、
880 Aが丙
881 島フェリー乗り場の窓口で直接購入し発券されていたことが判明した。
882
883
884 また、
885 検察官Pは、
886 同月14日にXの事情聴取を行った。
887
888 Xは、
889 同月1日にAから遊びに行
890 くという電話があったことや同月5日にAがX方に来た際に前記2記載のやり取りがあったこ
891 とを供述した。
892
893 Xは、
894 そのほか、
895 同月1日のAとの電話で、
896 同月5日に乙駅構内で待ち合わせ
897 て遊びに行くと約束したこと、
898 同月5日にX方を訪れた際にAは「昔から欲しかった車種だっ
899 た。
900
901 ナンバーも覚えやすいだろ。
902
903 」などと言っていたこと、
904 その車のナンバーがN300わ7
905 777という同じ数字が並んだものだったのでよく覚えていることなどを供述したため、
906 P
907 は、
908 その旨の同月14日付け検察官面前調書を作成し、
909 Xはこれに署名押印した。
910
911
912 検察官Pは、
913 その他所要の捜査を遂げ、
914 詐欺の被疑事実で送致されたAについて、
915 同月21
916 日、
917 C単純横領の罪で公判請求した。
918
919 Pは、
920 単純横領罪の成立時期について、
921 D同月4日午
922 後5時頃、
923 同月4日午後6時頃、
924 同月4日午後6時45分頃をそれぞれ検討したが、
925 検討
926 の結果、
927 同月4日午後6時45分頃とすることにした。
928
929
930
931 4
932
933 Aは、
934 同年3月18日の第1回公判期日の冒頭手続において、
935 同年2月4日にVから電話を受
936 けた際、
937 本件車両の返却期限の延長を了承してもらったので、
938 横領していないと主張し、
939 Aの
940 弁護人Bも、
941 Aの無罪を主張した。
942
943 また、
944 検察官Pが同月5日にX方を訪れた際のAの言動等
945 を立証するために証拠請求したXの検察官面前調書をBが不同意としたため、
946 Pは、
947 Xの証人
948 尋問を請求し、
949 裁判官JはXを証人として採用した。
950
951 Xは、
952 同年4月15日の第2回公判期日
953 において「令和6年2月1日にAから電話があったかどうか、
954 同月5日にAが私の家に来たか
955 どうか、
956 いずれももう何か月も前のことなので覚えていない。
957
958 Aは、
959 地元の中学校の同級生
960 で、
961 いつも怖い先輩たちとつるんでいた。
962
963 今日傍聴席にいる人たちも、
964 Aが昔からつるんでい
965 た先輩たちだと思う。
966
967 」などと証言し、
968 現に法廷の傍聴席には、
969 Aと同年代の男性が約10名
970 おり、
971 Aと目配せをしたり、
972 Xの証言中に咳払いをしたりしていた。
973
974 Pは、
975 Xの記憶喚起を試
976 みたが、
977 Xの証言内容は変わらなかったため、
978 Xの同年2月14日付け検察官面前調書の証拠
979 採用を求め、
980 EJは同調書を証拠として採用した。
981
982
983
984 〔設問1〕
985
986
987 下線部@につき、
988 司法警察員Kらが、
989 本件車両が放置された現場の写真撮影、
990 本件車両内
991 の本件フェリーのチケットの各半券の押収を、
992 令状の発付を受けずに行うことができる理由
993 を答えなさい。
994
995
996
997
998
999 下線部Aにつき、
1000 司法警察員Kが発付を受けた令状の種類及びその令状が必要であると考
1001 えた理由を答えなさい。
1002
1003
1004
1005 〔設問2〕
1006 - 8 -
1007
1008 検察官Pが下線部Bの指示をした理由を答えなさい。
1009
1010
1011 下線部Cにつき、
1012 検察官Pが送致事実である詐欺ではなく単純横領の罪でAを公判請求した理由
1013 について、
1014 詐欺罪の成立に積極的に働く事実、
1015 消極的に働く事実の双方を挙げつつ答えなさい。
1016
1017
1018 下線部Dにつき、
1019 検察官Pが単純横領の成立時期について、
1020 及びを検討した理由並びに
1021 、
1022 ではなくと結論付けた理由を答えなさい。
1023
1024
1025 〔設問3〕
1026 下線部Eにつき、
1027 裁判官JがXの検察官面前調書の採否を決定するに当たって考慮した具体的事
1028 実を、
1029 条文上の根拠と併せて答えなさい。
1030
1031
1032 〔設問4〕
1033 弁護人Bが、
1034 公判請求後にAと接見した際
1035
1036
1037 「起訴された事実は間違いないが、
1038 無罪主張をしてほしい。
1039
1040 」とAから言われ、
1041 無罪を主
1042 張すること
1043
1044
1045
1046 「Yに『AがVとの電話で、
1047 返却期限の延長を了承してもらっているのをレンタカーの助
1048 手席で聞いていた。
1049
1050 』といううその証言をさせてほしい。
1051
1052 」とAから言われ、
1053 Yを証人請求
1054 すること
1055
1056 について、
1057 それぞれ弁護士倫理上問題はあるか、
1058 司法試験予備試験用法文中の弁護士職務基本規
1059 程を適宜参照し、
1060 根拠条文と併せて答えなさい。
1061
1062
1063
1064 - 9 -
1065
1066 【別紙】
1067
1068 ※具体的な犯行場所や被害品時価等は省略
1069 被疑事実の要旨
1070
1071 被疑者は、
1072 車両借受け名目で車両をだまし取ろうと考え、
1073 令和6年2月3日午後1時頃、
1074 Tレン
1075 タカー丙営業所において、
1076 同営業所従業員Vに対し、
1077 真実は、
1078 レンタカーとして借り受けた車両を返
1079 却する意思がないのに、
1080 これがあるように装って車両の借受けを申し込み、
1081 同人をして借受期間経過
1082 後直ちに同車両が返却されるものと誤信させ、
1083 よって、
1084 その頃、
1085 同所において、
1086 同人から同人管理に
1087 係る普通乗用自動車1台(N300わ7777)の交付を受け、
1088 もって人を欺いて財物を交付させた
1089 ものである。
1090
1091
1092
1093 - 10 -
1094
1095