1 論文式試験問題集[倒
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3 -1 -
4
5
6
7 法]
8
9 [倒
10
11
12
13 法]
14
15 次の【事例】について、以下の設問に答えなさい。
16 なお、解答に当たっては、文中において特定されている日時にかかわらず、令和6年1月1日現
17 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
18 【事例】
19 Aは、個人事業として飲食店を経営し、従業員Bを雇用しており、Bの給料は月額30万円で、
20 毎月20日締め、同月25日払いとしていた。しかし、Aは、飲食店の経営が悪化したため、令和
21 5年1月25日支払分以降のBの給料を月額20万円に減らして支払うようになり、毎月の不足額
22 10万円分については、おって支払う旨をBに伝えていた。
23 Aは、飲食店の経営悪化による収入減を受けて、投機性の高い金融商品取引に関心を寄せるよう
24 になり、自らが所有する高級自動車を売却して、その売却代金を元手にFX取引(外国為替証拠金
25 取引)を始めようと考えた。Aは、令和5年8月、当該自動車を500万円で売却し、その売却代
26 金を元手にFX取引を始めたが、徐々に損失が大きくなり、その結果、資産が大幅に減少した。そ
27 こで、Aは、複数の消費者金融から借入れをし、その借入金をFX取引に投入したが、損失は膨ら
28 む一方となり、借入金の返済が困難になった。
29 Aは、令和5年9月20日、同月25日支払分の給料として20万円と予告手当を支払ってBを
30 解雇し、飲食店事業を停止した上、破産手続開始の申立て及び免責許可の申立てを弁護士Cに依頼
31 した。そこで、Cは、同年11月14日、裁判所に対し、Aの代理人として、上記各申立てを行っ
32 た。これを受けて、裁判所は、同月21日、Aについて破産手続開始の決定をし、破産管財人とし
33 てDを選任した。
34 その後、Dによる調査の過程で、Aの破産手続開始の申立て時の負債として、裁判所に提出され
35 た債権者一覧表(債権者名簿を兼ねている。)に記載のもののほか、Eからの借入金200万円の
36 存在が発覚した。Eからの借入金が債権者一覧表に記載されていなかったのは、Aが、破産手続開
37 始の申立てをCに委任する際、友人であるEとの関係が悪化することを恐れて、Cに対し、Eから
38 の借入金があることを説明しなかったからである。
39 〔設
40
41 問〕以下の1から3については、それぞれ独立したものとして解答しなさい。
42
43 1.Bは、Dに対し、令和5年1月25日支払分以降の給料の一部(毎月10万円)が支払われて
44 おらず、同年9月20日には解雇されて職を失ったため、家族も含めて生活に困窮している旨を
45 訴えた。
46 Dは、一定程度の破産財団を形成することができ、Bへの未払給料を弁済しても他の優先的な
47 債権者を害することはないと判断し、未払給料全額を配当手続によらずに弁済しようと考えてい
48 る。
49 未払給料債権が破産手続においてどのように取り扱われるかについて説明した上で、DがBに
50 対し配当手続によらずに上記弁済をすることが破産法上のいかなる根拠に基づくものであるかに
51 ついて、その趣旨にも言及しながら説明しなさい。その際、労務提供期間によって弁済の根拠が
52 異なる場合には、場合分けをして説明しなさい。なお、未払賃金の立替払制度については言及し
53 なくてよい。
54 2.Aの免責不許可事由の有無及びその内容について説明した上で、裁判所はAにつき免責を許可
55 することができるかについて説明しなさい。
56 3.Aの破産手続は、最後配当が行われて終結したが、下記の@からBまでを含む届出破産債権に
57 ついて、配当によっても全額の満足を受けられなかった。Aの免責手続については、免責許可の
58
59 -2 -
60
61 決定がされ、確定した。
62 @
63
64 飲食店において使用していた食材の未払の仕入代金
65
66 A
67
68 離婚した元配偶者との間で合意した子の養育費についての破産手続開始前に生じた未払金
69
70 B
71
72 令和5年10月20日にAが利用したレストランでの高額の飲食費についてのクレジット
73 カード会社の立替金
74
75
76
77 Aについての免責許可決定の確定により上記@の債権はどのように取り扱われることとなる
78 か、免責許可決定の効力を踏まえつつ、説明しなさい。
79
80
81
82 上記A及びBの各債権が非免責債権に該当するかについて説明しなさい。
83
84 -3 -
85
86 -4 -
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88 論文式試験問題集[租
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90 -5 -
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94 法]
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96 [租
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100 法]
101
102 令和3年1月1日、製薬会社A社(以下「A社」という。)は、著名な生化学者であるBを、
103 A社が社内に新たに立ち上げた新薬開発研究所(以下「C研究所」という。)の所長に据えた。A
104 社は、同族会社ではなく、暦年を事業年度とする。
105 A社とBの間で委任契約として締結された合意(以下「本契約」という。)には、以下の条件
106 が含まれていた。
107 @ Bは、C研究所の所長として、C研究所の運営について広範な裁量を与えられる。A社の職制
108 上、C研究所の所長は執行役員(会社法上の執行役ではない。)として位置付けられ、A社経営陣
109 の経営戦略上の指示に従って、C研究所スタッフの研究活動を指揮する。
110 A 契約期間は令和3年1月1日から令和5年12月31日までの3年間(以下「本契約期間」とい
111 う。)とするが、A社とBの合意により更に2年間の延長が可能である。本契約期間におけるBの
112 年俸は1億2000万円であり、A社はBに対して毎月末に1000万円を支払うものとする。本
113 契約期間の満了前に、Bの申出により、随時、本契約を解約することができるが、解約日を含む月
114 の翌月以降、上記の1000万円は支払われない。
115 B 本契約期間中、BはA社の許可なくして講演・執筆及び副業をしてはならず、本契約期間中のB
116 の研究活動の成果物に係る権利は全てA社に帰属する。
117 C A社は、本契約が解約されることなく本契約期間の満了までBが勤務を継続した場合、Bに対し
118 て報奨金として2億円(以下「本報奨金」という。)を、本契約期間の末日から1月以内に支払
119 う。なお、本契約が延長された場合にも、本報奨金は上記期限内に支払われる。
120 Bは、令和3年1月1日、本契約に基づいてC研究所の所長としての勤務を開始し、本契約期
121 間の末日である令和5年12月31日をもって勤務を終了した。A社は、Bの仕事ぶりを高く評価
122 していたため契約延長を申し入れたが、Bは、「しばらく仕事を離れて充電期間を持ちたい」とい
123 う意向でこれを固辞した。A社は、契約条件Cに基づき、令和6年1月25日、本報奨金をBに支
124 払った。
125 以上の事案について、以下の設問に答えなさい。解答に当たっては、理由を付し、根拠条文が
126 ある場合はそれを明記しなさい。ただし、租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、事案中の
127 年月日にかかわらず、令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさ
128 い。
129 〔設問〕
130 A社は、令和3年から令和5年の各事業年度において、Bに対し、本契約に従って、毎月末に10
131 00万円(1事業年度につき1億2000万円)を支払った。このA社のBに対する年俸の支払は、
132 A社の各事業年度における所得の金額の計算上どのように扱われるかについて、Bの「役員」該当性
133 に言及しつつ、説明しなさい。さらに、この年俸の支払に伴って、A社が負うことになる所得税法上
134 の義務について、年俸の性質について検討を加えた上で、説明しなさい。
135 Bが受け取った本報奨金につき、所得税法上、Bの退職所得として扱われるとする見解と、それ以
136 外の所得として扱われるとする見解が考えられる。そこで、@退職所得に該当するための要件を挙
137 げ、A退職所得以外の所得に該当するとすればどの所得分類となるかについて、可能性のあるものを
138 挙げた上で、B自説を論じなさい。
139 設問において、仮に本報奨金が退職所得に該当すると判断された場合に、@本報奨金の収入は、
140 Bのいつの年分の所得税の課税標準にどのように反映されるかについて説明しなさい。解答に当たっ
141 ては、本契約期間は短期勤続年数(所得税法第30条第4項)に一致するものとし、退職所得の金額
142 -6 -
143
144 の具体的な計算は不要とする。また、A本報奨金の支払は、A社のいつの事業年度の所得の金額にど
145 のように反映されるかについて説明しなさい。
146 (参照条文)法人税法施行令
147 (役員の範囲)
148 第7条
149 法第2条第15号(役員の意義)に規定する政令で定める者は、次に掲げる者とする。
150
151
152 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。次号において同じ。)
153 以外の者でその法人の経営に従事しているもの
154
155
156
157 (略)
158
159 -7 -
160
161 -8 -
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163 論文式試験問題集[経
164
165 -9 -
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167
168
169 法]
170
171 [経
172
173
174
175 法]
176
177 【前提】
178 X社は、体勢を保持するための福祉用具である甲製品(以下「甲製品」という。)のメーカーで
179 あり、我が国の甲製品の販売分野において約35パーセントのシェア(甲製品の国内における総販
180 売額に占める各社の販売額の割合)を有し、国内シェア第1位である。X社製甲製品は消費者から
181 高い評価を得ており、甲製品を販売する小売業者(以下「販売業者」という。)にとってX社製甲
182 製品を取り扱うことは営業上不可欠になっている。
183 メーカーは、販売業者を通じて甲製品を消費者に販売している。販売業者は、X社製甲製品だけ
184 でなく他メーカー製甲製品も販売しており、販売方法に特段の法規制はない。販売業者の販売形態
185 には、店舗での販売とインターネットを利用した販売がある(以下、店舗での販売を行う販売業者
186 を「店舗販売業者」、インターネットを利用した販売を行う販売業者を「ネット販売業者」とい
187 う。)。その割合は、店舗での販売が約8割、インターネットを利用した販売が約2割となってお
188 り、インターネットを利用した販売の割合は漸増しつつある。X社製甲製品の小売価格は、それぞ
189 れの販売業者が独自に決定しているが、ネット販売業者の小売価格の平均は店舗販売業者の小売価
190 格の平均より約10パーセント低い。
191 店舗販売業者の中には、その販売員がX社製甲製品の機能の特徴を説明して販売するもの(以
192 下、このような販売方法を「説明販売」という。)も少数存在するが、ネット販売業者の中には説
193 明販売を行っているものは存在しない。近年、X社製甲製品の販売額は伸び悩んでいる。その理由
194 を、X社は、店舗販売業者の販売員が適切な説明をできておらず、X社製甲製品の機能の特徴を消
195 費者に十分訴求できていない点にあると見ている。
196 〔設
197
198
199 問〕
200 上記の【前提】に加え、以下の事実がある場合に、X社の令和6年6月1日以降の行為につい
201 て、私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。)上の問
202 題点を分析して検討しなさい。
203 令和6年6月1日以降、X社は、店舗販売業者に対してのみ、X社が指示する方法・内容に
204 基づく販売員教育を実施して、来店した消費者にX社製甲製品の適切な説明を行う場合に限
205 り、説明販売を支援する協力金の提供を行うこととした。ネット販売業者は説明販売を行って
206 いないことから協力金の提供を受けていない。この協力金の金額は、店舗販売業者に対するX
207 社製甲製品の卸売価格の約5パーセントであり、店舗販売業者が説明販売に要する費用とおお
208 むね同等である。
209 なお、X社は、販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格について、店舗販売業者とネット
210 販売業者との間で差を設けていない。
211
212
213
214 上記の【前提】に加え、以下の事実がある場合(上記記載の事実はない。)に、X社の令和
215 6年9月1日以降の行為について、独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
216 令和6年6月1日、X社は、店舗販売業者に対し、X社が指示する方法・内容に基づく販売
217 員教育を実施して、来店した消費者にX社製甲製品の適切な説明を行うように要請した。その
218 後、この要請に従う費用(その金額は、店舗販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格の約5
219 パーセントである。)を甲製品の小売価格に上乗せして販売した結果、X社製甲製品の売上が
220 大幅に減少したため、大半の店舗販売業者からX社に対し、このままでは説明販売を維持でき
221
222 - 10 -
223
224 ないとの苦情が強く寄せられた。これに対応したX社による調査の結果、売上の大幅な減少の
225 主な原因はネット販売業者への顧客流出であることが明らかとなった。
226 そこで、X社は、店舗販売業者に説明販売を継続してもらうため、ネット販売業者への顧客
227 流出を阻止する必要があると考えて、同年9月1日以降、@店舗販売されるX社製甲製品の同
228 年6月1日以降の小売価格の平均を「小売定価」と定めて、全ての販売業者に対して、X社製
229 甲製品を「小売定価」で販売するよう求めることとし、A販売業者が「小売定価」どおりに販
230 売しない場合、当該販売業者に対するX社製甲製品の出荷を停止することとし、その旨を全て
231 の販売業者に通知した。その結果、全ての販売業者は、出荷停止を恐れて、X社製甲製品を
232 「小売定価」で販売するようになった。
233 なお、X社は、販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格について、店舗販売業者とネット
234 販売業者との間で差を設けていない。
235
236 - 11 -
237
238 - 12 -
239
240 論文式試験問題集[知的財産法]
241
242 - 13 -
243
244 [知的財産法]
245 小説家のAは、ファンタジー小説シリーズαの第1巻から第9巻までを創作し、これらはB社
246 から出版され、好評を博していた。αの各巻はそれぞれ独立した小説であるが、基本的な設定は共
247 通しており、何名かのキャラクターはシリーズを通じて登場している。Aは、αの第10巻の構想
248 を練っている途中で意欲をすっかり失い、執筆をやめてしまった。
249 B社は、Aが今後執筆を再開する見込みがないと判断し、別の小説家にαの第10巻の執筆を
250 依頼することにした。このため、B社は、Aから、Aが第10巻のために作成していたメモ書き等
251 の資料(以下「本件資料」という。)の提供を受け、その資料を用いて第三者に第10巻を創作さ
252 せること及びそれをB社が出版することについての許諾を得た。B社は、小説家のCに対して、第
253 10巻となる小説を創作することを依頼し、Cはこれを受けて小説を完成させ、この小説はB社か
254 ら出版された(以下、この小説を「本件小説」といい、αの第1巻から第9巻までを総じて「αの
255 過去作品」という。)。なお、Cは本件小説の執筆に当たり、B社から提供されたαの過去作品と
256 本件資料を参照したが、Aとは一切連絡を取っていない。
257 本件小説の主人公やその他のキャラクター数名は、αの過去作品に登場していたキャラクター
258 であり、本件小説の大まかなストーリーの構成は本件資料の記載にのっとったものである。また、
259 本件小説にシリーズで初めて登場するキャラクターのうち、特に重要な1名(以下「本件キャラク
260 ター」という。)の生い立ちや性格等の基本的な設定及びセリフの一部は本件資料に示されていた
261 ものと同一である。他方、本件キャラクターの名称及び外観上の特徴はCが考え出したものであ
262 る。
263 以上の事実関係を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各設問はそれぞれ独立したも
264 のであり、相互に関係はないものとする。
265 〔設問1〕
266 Dは、αを題材にしたポスターを多種類作成し、これらを印刷して販売している。これらのポス
267 ターの1つ(以下「本件ポスター」という。)には、本件キャラクターをDが視覚的に表現した絵
268 画が用いられるとともに、本件キャラクターの名称とセリフが記載されている。このセリフは、本
269 件資料にみられるセリフと同一のものである。
270 Cは、Dに対し、本件ポスターの印刷及び販売がCの有する著作権の侵害に当たると主張して
271 いる。Cの主張の妥当性について論じなさい。
272 〔設問2〕
273 本件小説が好評を博したため、B社は、本件小説の外伝として、本件キャラクターを主人公とす
274 る新たな小説の執筆をCに依頼し、Cは、これを受けて、小説を完成させた(以下、この小説を
275 「本件外伝」という。)。本件外伝においては、本件小説の基本的な設定はそのままになってお
276 り、本件小説においてCが創作した表現が一部に用いられているが、αの過去作品や本件資料にみ
277 られる表現は用いられていない。
278 本件外伝はB社から出版された。Aは、B社に対し、本件外伝の出版がAの有する著作権の侵害
279 に当たると主張している。B社の反論を想定しつつ、Aの主張の妥当性について論じなさい。
280
281 - 14 -
282
283 論文式試験問題集[労
284
285 - 15 -
286
287
288
289 法]
290
291 [労
292
293
294
295 法]
296
297 次の事例を読んで、後記の設問に答えなさい。
298 【事例】
299
300
301 Y高等学校を運営する学校法人であるY学園は、教職員がその職務外の活動により学校施設を
302 使用する場合、「学校施設の目的外使用に関する規程」(以下「本件規程」という。)に基づ
303 き、使用を希望する日の2週間前までに、学校長宛てに書面による許可申請をし、学校長からの
304 許可を得なければならないこととしていた。しかし、Y学園は、教職員の約30%が加入する労
305 働組合であるX組合が校舎内にある会議室を使用する場合、その直前に管理職である教頭に口頭
306 でその旨を告知すれば、学校運営上の具体的な支障が生じない限り、その使用を認める取扱いを
307 行ってきた。なお、上記の取扱いは、労働協約に基づくものではなく、事実上のものであった。
308 令和5年4月に新たに学校長に就任したAは、同年10月下旬頃、上記の取扱いによって、X
309 組合だけが、事実上、自由に会議室を使用することができる状態となっていることは、不公平で
310 あり、X組合に所属していない教職員の方が多いことを考慮すると、一層問題であるとの認識を
311 持つに至った。そこで、Aは、同月30日、教頭であるBに対し、X組合に所属していない教職
312 員に対する取扱いとの公平を図る観点から、X組合についても、会議室の使用につき本件規程に
313 従った取扱いをするように指示した。
314 X組合の委員長であり、教諭であるZは、同月31日、Bに対し、同年11月1日午後6時3
315 0分から1時間程度、会議室を組合活動に使用したいと申し出たところ、Bは、Zに対し、X組
316 合に所属していない教職員との公平を図る観点から従前の取扱いを改めることになったとして、
317 本件規程に基づいて学校長宛ての書面による許可申請をするよう求めた。Zは、X組合が、当
318 時、Y学園との間で、部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉を行ってお
319 り、Y学園と主張が激しく対立する状況にあったことや、他に上記日時に会議室の使用を予定し
320 ている者がいないことを確認していたこと等から、「このタイミングでの取扱いの変更は、Y学
321 園の方針に従わないX組合及びその組合員に対する嫌がらせとしか思えません。我々が会議室を
322 使用することによって、学校運営上の支障が生じない以上、従来どおり、会議室を使用させてい
323 ただきます。」と述べた。しかし、Bが、Aに相談の上、会議室の出入口を施錠したため、X組
324 合は、上記日時に会議室を使用することができなかった。その後も、X組合は、Y学園に対し、
325 従来どおりの取扱いの継続を求め、書面による許可申請を提出しなかったため、Y学園は、X組
326 合に対し、会議室の使用を拒否する状態が継続した。
327
328
329
330 X組合は、部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉がこう着状態にあっ
331 たことから、X組合に所属していない教職員にも理解と協力を求めていく必要があるとして、職
332 員室において、上記の待遇改善の必要性を訴えるビラを配布することとした。当該ビラは、上記
333 の内容を片面に印刷したA4サイズの紙1枚であった。Zは、令和6年1月18日の昼休みの時
334 間帯(教職員の休憩時間)に、職員室内において、職員室を訪れている生徒等がいないことを確
335 認した上で、在席している教職員に対しては、「組合の活動報告のビラです。よろしくお願いし
336 ます。」などと言いながら、上記ビラを手渡し、離席している教職員に対しては、机上に上記ビ
337 ラを裏返して置くという方法により、上記ビラの配布を行った。Zが上記ビラの配布に要した時
338 間は約10分間であり、昼休みの終了までに配布が完了した。
339 Aは、Zが職員室内でビラを配布したとの報告を受け、Zに事実確認をしたところ、Zは事実
340 関係を認めた。Aは、Zに対し、許可なく学校施設内においてビラを配布することは認められて
341 いないため、Zの行為について、処分を検討せざるを得ないと述べた。
342 Y学園は、Zからの弁明の聴取等の就業規則所定の手続を経た上で、令和6年3月15日、Z
343
344 - 16 -
345
346 に対し、上記ビラ配布の行為について、就業規則第39条第5号に規定された懲戒事由に該当す
347 るとの理由から、戒告とする懲戒処分をした。
348 【Y学園教職員就業規則(抜粋)】
349 第39条
350
351 教職員が次のいずれかに該当するときは、情状に応じ、戒告、減給、出勤停止、降格、諭
352
353 旨退職、懲戒解雇に処する。
354 1〜4
355
356
357 (略)
358
359 許可なく学校の施設・設備を使用し、又は学校施設内において、集会を開き、若しくは放送、掲
360 示、印刷物等の貼付、配布等をしたとき。
361
362 6・7
363
364
365 (略)
366
367 その他前各号に準ずる程度の行為があったとき。
368
369 第40条
370
371 前条の規定により懲戒を行うときは、当該教職員に対し、事前に弁明の機会を与える。
372
373 〔設問〕
374
375
376 X組合がY学園による会議室の使用拒否について労働委員会で争う場合、どのような申立てを
377 することができるか。また、その申立ては認められるか。検討すべき法律上の論点を挙げて論
378 じなさい。なお、X組合は、労働組合法第5条第1項が定める救済申立ての要件を満たしてい
379 るものとする。
380
381
382
383 Zは、戒告処分が無効であるとして裁判所に訴えを提起した。この戒告処分の有効性につい
384 て、検討すべき法律上の論点を挙げて、あなたの見解を述べなさい。
385
386 - 17 -
387
388 - 18 -
389
390 論文式試験問題集[環
391
392 - 19 -
393
394
395
396 法]
397
398 [環
399
400
401
402 法]
403
404 次の設例を読んで、以下の小問に答えなさい。なお、小問はいずれも独立したものである。
405 【設例】
406 A県内のB国立公園にある特別保護地区内には、国有林(ブナ林)があり、甲遊歩道が設置され
407 ている。Xが甲遊歩道を散策していたところ、甲遊歩道の入口から約500メートルの地点(以
408 下、この地点を「本件現場」という。)において、突然付近の国有林にあったブナの木が甲遊歩道
409 上のXに向かって倒れてきたため(以下、倒木したブナの木を「本件ブナの木」という。)、Xは
410 これを避けようとしてその場で転倒し、足を骨折する等全治3か月の怪我をした(以下「本件事
411 故」という。)。
412 本件現場の周辺地域は、国道に隣接して乙休憩所が設置され、同休憩所からブナ林内を2キロメ
413 ートルほど進んだ特別保護地区内に、景観が良好なことで全国的にも知られている丙渓谷があっ
414 た。甲遊歩道は、乙休憩所から丙渓谷までをつなぐ通路として設置されたものであって、甲遊歩道
415 には、約100メートルおきに休息のためのベンチが置かれていた。また、本件ブナの木の近くに
416 もベンチが置かれており、観光客が本件ブナの木周辺において散策ないし休息することが予定され
417 ていた。本件事故当時、甲遊歩道を通って丙渓谷を訪れる観光客は、年間約50万人程度であっ
418 た。甲遊歩道は、国有地を借り受けたA県が設置したものであり、A県が維持管理を行っていた。
419 本件ブナの木は国有地上の天然木であり、本件事故前に、国とA県が毎年定期的に合同で実施して
420 いる安全点検の際に、倒木のおそれがあるとは判定されていなかったが、本件事故後の調査により
421 木の内部の腐食が進んでいたことが倒木の原因であると判明した。
422 【小問】
423
424
425 B国立公園内には「特別地域」のほかに「普通地域」がある。自然公園法上、普通地域内にお
426 いて、広告物を設置する行為につき、事前にどのような手続をとる必要があるか。特別地域に
427 おける上記行為に対する事前の手続的義務と対比しながら、根拠条文を挙げつつ、その手続の
428 内容を説明しなさい。併せて、その手続的義務に違反して当該行為に着手した者に対して、刑
429 事的な制裁を科すために環境大臣が採れる措置について説明しなさい。
430
431
432
433 丙渓谷を訪れる観光客が年々増加傾向にあり、それに伴って良好な景観の維持が困難となり、
434 管理にも支障が生じてきている。この場合に環境大臣が採り得る自然公園法上の措置を説明し
435 なさい(ただし、当該措置を採るための手続については論じる必要はない。)。
436
437
438
439 Xは、国及びA県に対し、損害賠償請求を検討している。どのような法的構成が考えられる
440 か、根拠条文や要件を挙げつつ説明しなさい(ただし、甲遊歩道の設置管理に係る費用を負担
441 している観点からの責任については問わない。)。
442
443
444
445 現時点において、環境大臣は、A県内に新たに国立公園を指定し、かつ、その区域内に特別地
446 域を指定しようとしている。当該特別地域予定区域内に民有地が存在する場合、その指定に当
447 たって、所有者の同意が必要となるか。なお、国立公園の指定の前段階となる候補地の選定に
448 際しては、法規の性質を有しない要領が参考にされている。【資料1】は以前に用いられてい
449 たものであり、【資料2】は現在用いられているものである。これらを踏まえつつ、土地所有
450 者の同意の要否について、そのように考える理由とともに説明しなさい。
451
452 【資料1】
453 自然公園選定要領(昭和27年9月)(抜粋)
454
455 - 20 -
456
457 自然公園は傑出した自然の風景地中、下の要件を具備するものにつき選定するものとする。
458 (略)
459 第2要件
460
461 土地
462
463 (略)
464 社寺有地、私有地を包含する場合にあっては、土地の所有その他の関係者が特別地域の設定
465 に協力的であること。
466 (以下略)
467 【資料2】
468 国立公園及び国定公園の候補地の選定及び指定要領(平成25年5月)(抜粋)
469
470
471 国立公園及び国定公園の候補地の選定
472 国立公園及び国定公園の候補地は、全国的な観点から検討を行い、以下の要件を満たす地域を選
473 定する。
474
475 (略)
476
477
478 第5要件
479
480 地域社会との共存
481
482 候補地について、国立公園又は国定公園として保護及び利用することについて地域社会の理解
483 が得られること。
484 (以下略)
485
486 - 21 -
487
488 - 22 -
489
490 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
491
492 - 23 -
493
494 [国際関係法(公法系)]
495 A国とB国は、海を挟んで向かい合っている。A国とB国との間の海には、無人島であるP島
496 があり、同島はA国の領土であることが古くから国際的に広く認められていた。
497 A国政府は、長年にわたる経済政策の失敗の結果、極端な財政難に陥り、国家財政の再建のため
498 にP島をB国の利用に供して対価を得る方策を検討することになった。A国政府とB国政府は、P
499 島に関する条約を締結するための外交交渉を開始した。その結果、A国とB国は、「P島の租借に
500 関するA国とB国の間の条約」(以下「租借条約」という。)に署名し、同条約はその後A国及び
501 B国の議会の承認を得て発効した。租借条約は、「B国は、P島をA国から本条約発効後50年間
502 にわたり租借し、その間B国はP島を自由に利用することができる。」(第1条)、「B国は、P
503 島を利用する対価として、A国に対して毎年1億米ドルの支払を行う。」(第2条)と規定してい
504 た。なお、A国とB国は、共に国際連合加盟国であり、条約法に関するウィーン条約及び海洋法に
505 関する国際連合条約の当事国である。以上の事実関係を前提として、以下の各設問に答えなさい。
506 なお、各設問はそれぞれ独立したものであり、相互に関係はないものとする。
507 〔設問1〕
508 租借条約の規定に従って、B国がA国に対して最初の1億米ドルの支払を行うとともにP島の
509 利用を開始してから1か月後に、突如として巨大地震が発生してP島全体が低潮時においても水中
510 に没することとなった。この場合、B国はA国に対してどのような主張を行うことができるか。国
511 際法上の根拠を挙げながら論じなさい。
512 〔設問2〕
513 租借条約の締結に関するAB両国政府間の外交交渉の過程で、A国政府はB国政府に対して、
514 P島には未開発の貴重な鉱物資源が埋蔵されている旨を公式に通告し、B国は、この情報に基づい
515 て租借条約を締結した。租借条約の発効後、B国はA国に対して毎年1億米ドルの支払を行い、別
516 途P島において多額の費用を掛けて鉱物資源の探査を行ったが、貴重な鉱物資源は全く発見されな
517 かった。租借条約発効から3年が経過した時点で、A国政府がB国政府に通告したような鉱物資源
518 はP島には埋蔵されていなかったことが明らかとなった。この場合、B国はA国に対してどのよう
519 な主張を行うことができるか。国際法上の根拠を挙げながら論じなさい。
520 〔設問3〕
521 租借条約発効の5年後、A国政府の財政状況が更に悪化したため、A国はB国と再度外交交渉を
522 行って租借条約を両国の合意に基づき終了させた上で、新たに「P島の主権移譲に関するA国とB
523 国の間の条約」(以下「主権移譲条約」という。)を締結し、同条約はその後A国及びB国の議会
524 の承認を得て発効した。主権移譲条約は、P島に関する主権をA国からB国に完全に移譲する対価
525 として、B国がA国に100億米ドルを支払うことを規定していた。B国がA国に100億米ドル
526 の支払を行いP島に関する主権がA国からB国に完全に移譲された後、B国はP島を起点とする2
527 00海里の排他的経済水域及び大陸棚を設定する国内法を制定した。これに対して、B国と国境を
528 接し海に面しているC国は、「P島は無人島であるため、P島を起点としてB国の排他的経済水域
529 及び大陸棚を設定することは国際法に違反しており認められない。」と主張して、B国に抗議し
530 た。C国のこのような主張に対して、B国はどのように反論できるか。国際法上の根拠を挙げなが
531 ら論じなさい。なお、C国も国際連合加盟国であり、条約法に関するウィーン条約及び海洋法に関
532 する国際連合条約の当事国である。
533
534 - 24 -
535
536 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
537
538 - 25 -
539
540 [国際関係法(私法系)]
541 甲国人A男と日本人B女は、Bがワーキング・ホリデー制度を利用して甲国に滞在していたときに同
542 じ職場で知り合い、その後、甲国で適法に婚姻した。AとBは、婚姻後5年ほど甲国で共同生活を送
543 り、その間、二人の間に子C(甲国及び日本の重国籍)が生まれた。その後、Aが日本の会社に転職す
544 ることになり、A、B及びCは一緒に日本に移り住み、それ以降、日本に居住している。
545 AとBは、乙国のリゾート地を気に入って長期の休暇の度に利用していたところ、Aは、日本に移り
546 住んでから1年後に、不動産業者Y(乙国法人。乙国に本店を有し、乙国以外には営業所や財産を一切
547 有しておらず、乙国以外で事業等を行っていない。)との間で、乙国のリゾート地の不動産αを購入す
548 る契約を締結した。
549 以上の事実を前提として、以下の設問に答えなさい。なお、各問は独立した問いである。
550 〔設問1〕
551 Aは、不動産αを購入したものの、その後AとBが共に仕事で忙しくなり、乙国で長期の休暇を過ご
552 すことが難しくなった。そのため、Aは、不動産αを購入してから5年後、Yに対して不動産αの転売
553 を相談したところ、Yから、転売ではなく期限付きの会員制施設利用権購入契約(1年のうち決められ
554 た期間だけ対象施設の独占的利用権が付与される契約)の対象とすることを勧められ、Yに不動産αの
555 運用を委託した。Yは、乙国への旅行客向けに、乙国内の滞在型宿泊施設の会員制施設利用権の購入を
556 勧めるセミナーを乙国内で定期的に開催していた。乙国を初めて旅行で訪れた日本人X(日本に常居所
557 ・住所を有する。)は、宿泊していたホテルのロビーに貼ってあったYの当該セミナーのポスターに目
558 を留めた。Xは、それまでYの名前を聞いたこともなくYという会社を知らなかったが、セミナー会場
559 がホテルのすぐ近くであることや参加者には無料のアフタヌーンティーが提供されるとの宣伝文句に興
560 味をひかれ、セミナーに行ってみることにした。Xは、セミナーの内容を聞き終わり、アフタヌーンテ
561 ィーも満喫したため、Yの社員に「もう帰りたい。」と告げた。しかし、Xは、それまで愛想の良かっ
562 たYの社員複数名から取り囲まれ、「契約を締結しないと帰さない。」と言われたため困惑し、その場
563 で、不動産αを毎年10月の1か月間独占的に利用することのできる会員制施設利用権購入契約(以下
564 「本件契約」という。)をYとの間で締結し、インターネットバンキングを利用して頭金100万円を
565 乙国所在のY名義の銀行口座に振り込んで支払った。なお、本件契約の契約書においては、紛争解決条
566 項として、「P条:本契約は、乙国法に準拠し、乙国法に従って解釈されるものとする。Q条:本契約
567 に関する一切の紛争は、乙国裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。」と明記されていた。
568 Xは、日本に帰ってから本件契約を締結したことを後悔し、契約締結後1か月が経った頃、本件契約
569 に係る意思表示を取り消したいと思うようになった。そこで、Xは、Yに対して、日本の消費者契約法
570 第4条第3項第2号の適用及び同号に基づく本件契約に係る意思表示の取消しを主張した上で、支払済
571 みの金銭の全額の返還を求める訴え(以下「本件訴え」という。)を日本の裁判所に提起した。
572 〔小問1〕
573 本件訴えについて、Yは、「本件契約の契約書中のQ条に基づき乙国裁判所に専属的管轄合意
574 がされているため、本件訴えは却下されるべきである。」と主張している。Yのこの主張は認めら
575 れるかについて論じなさい。
576 Yのの主張が認められないとした場合に、本件訴えについて、日本の裁判所の国際裁判管轄
577 権が認められるかについて論じなさい。
578 〔小問2〕
579 Yは、本件訴えについて日本の裁判所の国際裁判管轄権を争うことなく応訴した。この場合におい
580 て、Xの日本法に基づく主張が認められるかについて、準拠法の決定過程を示しながら論じなさい。
581
582 - 26 -
583
584 〔設問2〕
585 Aは、日本に移り住んでから15年後に死亡した。Aは、遺言を作成しておらず、Aの遺産として残
586 された財産は、乙国所在の不動産α、日本所在の動産及び日本の銀行に対する預金債権のみであったと
587 ころ、BとCとの間でAの遺産をどのように分割するかについて争いが生じた。Cは、日本の家庭裁判
588 所に対し、Bを相手方として、遺産分割の調停を申し立てたが、調停事件は不成立により終了し、遺産
589 分割の審判の申立てがあったものとみなされて、審判に移行した。裁判所は、この遺産分割において、
590 動産及び銀行預金についてはB及びCの持分をそれぞれ2分の1ずつ、不動産αについてはBの持分を
591 3分の1、Cの持分を3分の2とすることを前提として審判をした。裁判所が前提とした持分の判断に
592 ついて、準拠法の決定過程を示しながら説明しなさい。
593 なお、甲国法には本問に関する範囲で、以下の規定があるものとする。
594 【甲国法】
595 @ 被相続人の直系卑属は以下の規定に従って相続人となる。
596 第1号 親等が異なる者の間では、その近い者を先にする。
597 第2号 親等が同じである者は、同順位で相続人となる。
598 A 被相続人の配偶者は常に相続人となる。この場合において、@の規定によって相続人となるべき者
599 があるときは、その者と同順位とする。
600 B 同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は以下の規定に従う。
601 第1号 直系卑属及び配偶者が相続人であるときは、直系卑属の相続分は3分の2とし、配偶者の相
602 続分は3分の1とする。(第2号以下略)
603 C 相続については、被相続人の死亡時の常居所地法を適用する。ただし、不動産の相続については、
604 不動産の所在地法を適用する。
605
606 - 27 -
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