1 論文式試験問題集[倒
2
3 -1 -
4
5 産
6
7 法]
8
9 [倒
10
11 産
12
13 法]
14
15 次の【事例】について、
16 以下の設問に答えなさい。
17
18
19 なお、
20 解答に当たっては、
21 文中において特定されている日時にかかわらず、
22 令和6年1月1日現
23 在において施行されている法令に基づいて答えなさい。
24
25
26 【事例】
27 Aは、
28 個人事業として飲食店を経営し、
29 従業員Bを雇用しており、
30 Bの給料は月額30万円で、
31
32 毎月20日締め、
33 同月25日払いとしていた。
34
35 しかし、
36 Aは、
37 飲食店の経営が悪化したため、
38 令和
39 5年1月25日支払分以降のBの給料を月額20万円に減らして支払うようになり、
40 毎月の不足額
41 10万円分については、
42 おって支払う旨をBに伝えていた。
43
44
45 Aは、
46 飲食店の経営悪化による収入減を受けて、
47 投機性の高い金融商品取引に関心を寄せるよう
48 になり、
49 自らが所有する高級自動車を売却して、
50 その売却代金を元手にFX取引(外国為替証拠金
51 取引)を始めようと考えた。
52
53 Aは、
54 令和5年8月、
55 当該自動車を500万円で売却し、
56 その売却代
57 金を元手にFX取引を始めたが、
58 徐々に損失が大きくなり、
59 その結果、
60 資産が大幅に減少した。
61
62 そ
63 こで、
64 Aは、
65 複数の消費者金融から借入れをし、
66 その借入金をFX取引に投入したが、
67 損失は膨ら
68 む一方となり、
69 借入金の返済が困難になった。
70
71
72 Aは、
73 令和5年9月20日、
74 同月25日支払分の給料として20万円と予告手当を支払ってBを
75 解雇し、
76 飲食店事業を停止した上、
77 破産手続開始の申立て及び免責許可の申立てを弁護士Cに依頼
78 した。
79
80 そこで、
81 Cは、
82 同年11月14日、
83 裁判所に対し、
84 Aの代理人として、
85 上記各申立てを行っ
86 た。
87
88 これを受けて、
89 裁判所は、
90 同月21日、
91 Aについて破産手続開始の決定をし、
92 破産管財人とし
93 てDを選任した。
94
95
96 その後、
97 Dによる調査の過程で、
98 Aの破産手続開始の申立て時の負債として、
99 裁判所に提出され
100 た債権者一覧表(債権者名簿を兼ねている。
101
102 )に記載のもののほか、
103 Eからの借入金200万円の
104 存在が発覚した。
105
106 Eからの借入金が債権者一覧表に記載されていなかったのは、
107 Aが、
108 破産手続開
109 始の申立てをCに委任する際、
110 友人であるEとの関係が悪化することを恐れて、
111 Cに対し、
112 Eから
113 の借入金があることを説明しなかったからである。
114
115
116 〔設
117
118 問〕以下の1から3については、
119 それぞれ独立したものとして解答しなさい。
120
121
122
123 1.Bは、
124 Dに対し、
125 令和5年1月25日支払分以降の給料の一部(毎月10万円)が支払われて
126 おらず、
127 同年9月20日には解雇されて職を失ったため、
128 家族も含めて生活に困窮している旨を
129 訴えた。
130
131
132 Dは、
133 一定程度の破産財団を形成することができ、
134 Bへの未払給料を弁済しても他の優先的な
135 債権者を害することはないと判断し、
136 未払給料全額を配当手続によらずに弁済しようと考えてい
137 る。
138
139
140 未払給料債権が破産手続においてどのように取り扱われるかについて説明した上で、
141 DがBに
142 対し配当手続によらずに上記弁済をすることが破産法上のいかなる根拠に基づくものであるかに
143 ついて、
144 その趣旨にも言及しながら説明しなさい。
145
146 その際、
147 労務提供期間によって弁済の根拠が
148 異なる場合には、
149 場合分けをして説明しなさい。
150
151 なお、
152 未払賃金の立替払制度については言及し
153 なくてよい。
154
155
156 2.Aの免責不許可事由の有無及びその内容について説明した上で、
157 裁判所はAにつき免責を許可
158 することができるかについて説明しなさい。
159
160
161 3.Aの破産手続は、
162 最後配当が行われて終結したが、
163 下記の@からBまでを含む届出破産債権に
164 ついて、
165 配当によっても全額の満足を受けられなかった。
166
167 Aの免責手続については、
168 免責許可の
169
170 -2 -
171
172 決定がされ、
173 確定した。
174
175
176 @
177
178 飲食店において使用していた食材の未払の仕入代金
179
180 A
181
182 離婚した元配偶者との間で合意した子の養育費についての破産手続開始前に生じた未払金
183
184 B
185
186 令和5年10月20日にAが利用したレストランでの高額の飲食費についてのクレジット
187 カード会社の立替金
188
189
190
191 Aについての免責許可決定の確定により上記@の債権はどのように取り扱われることとなる
192 か、
193 免責許可決定の効力を踏まえつつ、
194 説明しなさい。
195
196
197
198
199
200 上記A及びBの各債権が非免責債権に該当するかについて説明しなさい。
201
202
203
204 -3 -
205
206 -4 -
207
208 論文式試験問題集[租
209
210 -5 -
211
212 税
213
214 法]
215
216 [租
217
218 税
219
220 法]
221
222 令和3年1月1日、
223 製薬会社A社(以下「A社」という。
224
225 )は、
226 著名な生化学者であるBを、
227
228 A社が社内に新たに立ち上げた新薬開発研究所(以下「C研究所」という。
229
230 )の所長に据えた。
231
232 A
233 社は、
234 同族会社ではなく、
235 暦年を事業年度とする。
236
237
238 A社とBの間で委任契約として締結された合意(以下「本契約」という。
239
240 )には、
241 以下の条件
242 が含まれていた。
243
244
245 @ Bは、
246 C研究所の所長として、
247 C研究所の運営について広範な裁量を与えられる。
248
249 A社の職制
250 上、
251 C研究所の所長は執行役員(会社法上の執行役ではない。
252
253 )として位置付けられ、
254 A社経営陣
255 の経営戦略上の指示に従って、
256 C研究所スタッフの研究活動を指揮する。
257
258
259 A 契約期間は令和3年1月1日から令和5年12月31日までの3年間(以下「本契約期間」とい
260 う。
261
262 )とするが、
263 A社とBの合意により更に2年間の延長が可能である。
264
265 本契約期間におけるBの
266 年俸は1億2000万円であり、
267 A社はBに対して毎月末に1000万円を支払うものとする。
268
269 本
270 契約期間の満了前に、
271 Bの申出により、
272 随時、
273 本契約を解約することができるが、
274 解約日を含む月
275 の翌月以降、
276 上記の1000万円は支払われない。
277
278
279 B 本契約期間中、
280 BはA社の許可なくして講演・執筆及び副業をしてはならず、
281 本契約期間中のB
282 の研究活動の成果物に係る権利は全てA社に帰属する。
283
284
285 C A社は、
286 本契約が解約されることなく本契約期間の満了までBが勤務を継続した場合、
287 Bに対し
288 て報奨金として2億円(以下「本報奨金」という。
289
290 )を、
291 本契約期間の末日から1月以内に支払
292 う。
293
294 なお、
295 本契約が延長された場合にも、
296 本報奨金は上記期限内に支払われる。
297
298
299 Bは、
300 令和3年1月1日、
301 本契約に基づいてC研究所の所長としての勤務を開始し、
302 本契約期
303 間の末日である令和5年12月31日をもって勤務を終了した。
304
305 A社は、
306 Bの仕事ぶりを高く評価
307 していたため契約延長を申し入れたが、
308 Bは、
309 「しばらく仕事を離れて充電期間を持ちたい」とい
310 う意向でこれを固辞した。
311
312 A社は、
313 契約条件Cに基づき、
314 令和6年1月25日、
315 本報奨金をBに支
316 払った。
317
318
319 以上の事案について、
320 以下の設問に答えなさい。
321
322 解答に当たっては、
323 理由を付し、
324 根拠条文が
325 ある場合はそれを明記しなさい。
326
327 ただし、
328 租税特別措置法の適用は考慮しないものとし、
329 事案中の
330 年月日にかかわらず、
331 令和6年1月1日現在において施行されている法令に基づいて解答しなさ
332 い。
333
334
335 〔設問〕
336 A社は、
337 令和3年から令和5年の各事業年度において、
338 Bに対し、
339 本契約に従って、
340 毎月末に10
341 00万円(1事業年度につき1億2000万円)を支払った。
342
343 このA社のBに対する年俸の支払は、
344
345 A社の各事業年度における所得の金額の計算上どのように扱われるかについて、
346 Bの「役員」該当性
347 に言及しつつ、
348 説明しなさい。
349
350 さらに、
351 この年俸の支払に伴って、
352 A社が負うことになる所得税法上
353 の義務について、
354 年俸の性質について検討を加えた上で、
355 説明しなさい。
356
357
358 Bが受け取った本報奨金につき、
359 所得税法上、
360 Bの退職所得として扱われるとする見解と、
361 それ以
362 外の所得として扱われるとする見解が考えられる。
363
364 そこで、
365 @退職所得に該当するための要件を挙
366 げ、
367 A退職所得以外の所得に該当するとすればどの所得分類となるかについて、
368 可能性のあるものを
369 挙げた上で、
370 B自説を論じなさい。
371
372
373 設問において、
374 仮に本報奨金が退職所得に該当すると判断された場合に、
375 @本報奨金の収入は、
376
377 Bのいつの年分の所得税の課税標準にどのように反映されるかについて説明しなさい。
378
379 解答に当たっ
380 ては、
381 本契約期間は短期勤続年数(所得税法第30条第4項)に一致するものとし、
382 退職所得の金額
383 -6 -
384
385 の具体的な計算は不要とする。
386
387 また、
388 A本報奨金の支払は、
389 A社のいつの事業年度の所得の金額にど
390 のように反映されるかについて説明しなさい。
391
392
393 (参照条文)法人税法施行令
394 (役員の範囲)
395 第7条
396 法第2条第15号(役員の意義)に規定する政令で定める者は、
397 次に掲げる者とする。
398
399
400 1
401
402 法人の使用人(職制上使用人としての地位のみを有する者に限る。
403
404 次号において同じ。
405
406 )
407 以外の者でその法人の経営に従事しているもの
408
409 2
410
411 (略)
412
413 -7 -
414
415 -8 -
416
417 論文式試験問題集[経
418
419 -9 -
420
421 済
422
423 法]
424
425 [経
426
427 済
428
429 法]
430
431 【前提】
432 X社は、
433 体勢を保持するための福祉用具である甲製品(以下「甲製品」という。
434
435 )のメーカーで
436 あり、
437 我が国の甲製品の販売分野において約35パーセントのシェア(甲製品の国内における総販
438 売額に占める各社の販売額の割合)を有し、
439 国内シェア第1位である。
440
441 X社製甲製品は消費者から
442 高い評価を得ており、
443 甲製品を販売する小売業者(以下「販売業者」という。
444
445 )にとってX社製甲
446 製品を取り扱うことは営業上不可欠になっている。
447
448
449 メーカーは、
450 販売業者を通じて甲製品を消費者に販売している。
451
452 販売業者は、
453 X社製甲製品だけ
454 でなく他メーカー製甲製品も販売しており、
455 販売方法に特段の法規制はない。
456
457 販売業者の販売形態
458 には、
459 店舗での販売とインターネットを利用した販売がある(以下、
460 店舗での販売を行う販売業者
461 を「店舗販売業者」、
462 インターネットを利用した販売を行う販売業者を「ネット販売業者」とい
463 う。
464
465 )。
466
467 その割合は、
468 店舗での販売が約8割、
469 インターネットを利用した販売が約2割となってお
470 り、
471 インターネットを利用した販売の割合は漸増しつつある。
472
473 X社製甲製品の小売価格は、
474 それぞ
475 れの販売業者が独自に決定しているが、
476 ネット販売業者の小売価格の平均は店舗販売業者の小売価
477 格の平均より約10パーセント低い。
478
479
480 店舗販売業者の中には、
481 その販売員がX社製甲製品の機能の特徴を説明して販売するもの(以
482 下、
483 このような販売方法を「説明販売」という。
484
485 )も少数存在するが、
486 ネット販売業者の中には説
487 明販売を行っているものは存在しない。
488
489 近年、
490 X社製甲製品の販売額は伸び悩んでいる。
491
492 その理由
493 を、
494 X社は、
495 店舗販売業者の販売員が適切な説明をできておらず、
496 X社製甲製品の機能の特徴を消
497 費者に十分訴求できていない点にあると見ている。
498
499
500 〔設
501
502
503 問〕
504 上記の【前提】に加え、
505 以下の事実がある場合に、
506 X社の令和6年6月1日以降の行為につい
507 て、
508 私的独占の禁止及び公正取引の確保に関する法律(以下「独占禁止法」という。
509
510 )上の問
511 題点を分析して検討しなさい。
512
513
514 令和6年6月1日以降、
515 X社は、
516 店舗販売業者に対してのみ、
517 X社が指示する方法・内容に
518 基づく販売員教育を実施して、
519 来店した消費者にX社製甲製品の適切な説明を行う場合に限
520 り、
521 説明販売を支援する協力金の提供を行うこととした。
522
523 ネット販売業者は説明販売を行って
524 いないことから協力金の提供を受けていない。
525
526 この協力金の金額は、
527 店舗販売業者に対するX
528 社製甲製品の卸売価格の約5パーセントであり、
529 店舗販売業者が説明販売に要する費用とおお
530 むね同等である。
531
532
533 なお、
534 X社は、
535 販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格について、
536 店舗販売業者とネット
537 販売業者との間で差を設けていない。
538
539
540
541
542
543 上記の【前提】に加え、
544 以下の事実がある場合(上記記載の事実はない。
545
546 )に、
547 X社の令和
548 6年9月1日以降の行為について、
549 独占禁止法上の問題点を分析して検討しなさい。
550
551
552 令和6年6月1日、
553 X社は、
554 店舗販売業者に対し、
555 X社が指示する方法・内容に基づく販売
556 員教育を実施して、
557 来店した消費者にX社製甲製品の適切な説明を行うように要請した。
558
559 その
560 後、
561 この要請に従う費用(その金額は、
562 店舗販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格の約5
563 パーセントである。
564
565 )を甲製品の小売価格に上乗せして販売した結果、
566 X社製甲製品の売上が
567 大幅に減少したため、
568 大半の店舗販売業者からX社に対し、
569 このままでは説明販売を維持でき
570
571 - 10 -
572
573 ないとの苦情が強く寄せられた。
574
575 これに対応したX社による調査の結果、
576 売上の大幅な減少の
577 主な原因はネット販売業者への顧客流出であることが明らかとなった。
578
579
580 そこで、
581 X社は、
582 店舗販売業者に説明販売を継続してもらうため、
583 ネット販売業者への顧客
584 流出を阻止する必要があると考えて、
585 同年9月1日以降、
586 @店舗販売されるX社製甲製品の同
587 年6月1日以降の小売価格の平均を「小売定価」と定めて、
588 全ての販売業者に対して、
589 X社製
590 甲製品を「小売定価」で販売するよう求めることとし、
591 A販売業者が「小売定価」どおりに販
592 売しない場合、
593 当該販売業者に対するX社製甲製品の出荷を停止することとし、
594 その旨を全て
595 の販売業者に通知した。
596
597 その結果、
598 全ての販売業者は、
599 出荷停止を恐れて、
600 X社製甲製品を
601 「小売定価」で販売するようになった。
602
603
604 なお、
605 X社は、
606 販売業者に対するX社製甲製品の卸売価格について、
607 店舗販売業者とネット
608 販売業者との間で差を設けていない。
609
610
611
612 - 11 -
613
614 - 12 -
615
616 論文式試験問題集[知的財産法]
617
618 - 13 -
619
620 [知的財産法]
621 小説家のAは、
622 ファンタジー小説シリーズαの第1巻から第9巻までを創作し、
623 これらはB社
624 から出版され、
625 好評を博していた。
626
627 αの各巻はそれぞれ独立した小説であるが、
628 基本的な設定は共
629 通しており、
630 何名かのキャラクターはシリーズを通じて登場している。
631
632 Aは、
633 αの第10巻の構想
634 を練っている途中で意欲をすっかり失い、
635 執筆をやめてしまった。
636
637
638 B社は、
639 Aが今後執筆を再開する見込みがないと判断し、
640 別の小説家にαの第10巻の執筆を
641 依頼することにした。
642
643 このため、
644 B社は、
645 Aから、
646 Aが第10巻のために作成していたメモ書き等
647 の資料(以下「本件資料」という。
648
649 )の提供を受け、
650 その資料を用いて第三者に第10巻を創作さ
651 せること及びそれをB社が出版することについての許諾を得た。
652
653 B社は、
654 小説家のCに対して、
655 第
656 10巻となる小説を創作することを依頼し、
657 Cはこれを受けて小説を完成させ、
658 この小説はB社か
659 ら出版された(以下、
660 この小説を「本件小説」といい、
661 αの第1巻から第9巻までを総じて「αの
662 過去作品」という。
663
664 )。
665
666 なお、
667 Cは本件小説の執筆に当たり、
668 B社から提供されたαの過去作品と
669 本件資料を参照したが、
670 Aとは一切連絡を取っていない。
671
672
673 本件小説の主人公やその他のキャラクター数名は、
674 αの過去作品に登場していたキャラクター
675 であり、
676 本件小説の大まかなストーリーの構成は本件資料の記載にのっとったものである。
677
678 また、
679
680 本件小説にシリーズで初めて登場するキャラクターのうち、
681 特に重要な1名(以下「本件キャラク
682 ター」という。
683
684 )の生い立ちや性格等の基本的な設定及びセリフの一部は本件資料に示されていた
685 ものと同一である。
686
687 他方、
688 本件キャラクターの名称及び外観上の特徴はCが考え出したものであ
689 る。
690
691
692 以上の事実関係を前提として、
693 以下の設問に答えなさい。
694
695 なお、
696 各設問はそれぞれ独立したも
697 のであり、
698 相互に関係はないものとする。
699
700
701 〔設問1〕
702 Dは、
703 αを題材にしたポスターを多種類作成し、
704 これらを印刷して販売している。
705
706 これらのポス
707 ターの1つ(以下「本件ポスター」という。
708
709 )には、
710 本件キャラクターをDが視覚的に表現した絵
711 画が用いられるとともに、
712 本件キャラクターの名称とセリフが記載されている。
713
714 このセリフは、
715 本
716 件資料にみられるセリフと同一のものである。
717
718
719 Cは、
720 Dに対し、
721 本件ポスターの印刷及び販売がCの有する著作権の侵害に当たると主張して
722 いる。
723
724 Cの主張の妥当性について論じなさい。
725
726
727 〔設問2〕
728 本件小説が好評を博したため、
729 B社は、
730 本件小説の外伝として、
731 本件キャラクターを主人公とす
732 る新たな小説の執筆をCに依頼し、
733 Cは、
734 これを受けて、
735 小説を完成させた(以下、
736 この小説を
737 「本件外伝」という。
738
739 )。
740
741 本件外伝においては、
742 本件小説の基本的な設定はそのままになってお
743 り、
744 本件小説においてCが創作した表現が一部に用いられているが、
745 αの過去作品や本件資料にみ
746 られる表現は用いられていない。
747
748
749 本件外伝はB社から出版された。
750
751 Aは、
752 B社に対し、
753 本件外伝の出版がAの有する著作権の侵害
754 に当たると主張している。
755
756 B社の反論を想定しつつ、
757 Aの主張の妥当性について論じなさい。
758
759
760
761 - 14 -
762
763 論文式試験問題集[労
764
765 - 15 -
766
767 働
768
769 法]
770
771 [労
772
773 働
774
775 法]
776
777 次の事例を読んで、
778 後記の設問に答えなさい。
779
780
781 【事例】
782 1
783
784 Y高等学校を運営する学校法人であるY学園は、
785 教職員がその職務外の活動により学校施設を
786 使用する場合、
787 「学校施設の目的外使用に関する規程」(以下「本件規程」という。
788
789 )に基づ
790 き、
791 使用を希望する日の2週間前までに、
792 学校長宛てに書面による許可申請をし、
793 学校長からの
794 許可を得なければならないこととしていた。
795
796 しかし、
797 Y学園は、
798 教職員の約30%が加入する労
799 働組合であるX組合が校舎内にある会議室を使用する場合、
800 その直前に管理職である教頭に口頭
801 でその旨を告知すれば、
802 学校運営上の具体的な支障が生じない限り、
803 その使用を認める取扱いを
804 行ってきた。
805
806 なお、
807 上記の取扱いは、
808 労働協約に基づくものではなく、
809 事実上のものであった。
810
811
812 令和5年4月に新たに学校長に就任したAは、
813 同年10月下旬頃、
814 上記の取扱いによって、
815 X
816 組合だけが、
817 事実上、
818 自由に会議室を使用することができる状態となっていることは、
819 不公平で
820 あり、
821 X組合に所属していない教職員の方が多いことを考慮すると、
822 一層問題であるとの認識を
823 持つに至った。
824
825 そこで、
826 Aは、
827 同月30日、
828 教頭であるBに対し、
829 X組合に所属していない教職
830 員に対する取扱いとの公平を図る観点から、
831 X組合についても、
832 会議室の使用につき本件規程に
833 従った取扱いをするように指示した。
834
835
836 X組合の委員長であり、
837 教諭であるZは、
838 同月31日、
839 Bに対し、
840 同年11月1日午後6時3
841 0分から1時間程度、
842 会議室を組合活動に使用したいと申し出たところ、
843 Bは、
844 Zに対し、
845 X組
846 合に所属していない教職員との公平を図る観点から従前の取扱いを改めることになったとして、
847
848 本件規程に基づいて学校長宛ての書面による許可申請をするよう求めた。
849
850 Zは、
851 X組合が、
852 当
853 時、
854 Y学園との間で、
855 部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉を行ってお
856 り、
857 Y学園と主張が激しく対立する状況にあったことや、
858 他に上記日時に会議室の使用を予定し
859 ている者がいないことを確認していたこと等から、
860 「このタイミングでの取扱いの変更は、
861 Y学
862 園の方針に従わないX組合及びその組合員に対する嫌がらせとしか思えません。
863
864 我々が会議室を
865 使用することによって、
866 学校運営上の支障が生じない以上、
867 従来どおり、
868 会議室を使用させてい
869 ただきます。
870
871 」と述べた。
872
873 しかし、
874 Bが、
875 Aに相談の上、
876 会議室の出入口を施錠したため、
877 X組
878 合は、
879 上記日時に会議室を使用することができなかった。
880
881 その後も、
882 X組合は、
883 Y学園に対し、
884
885 従来どおりの取扱いの継続を求め、
886 書面による許可申請を提出しなかったため、
887 Y学園は、
888 X組
889 合に対し、
890 会議室の使用を拒否する状態が継続した。
891
892
893
894 2
895
896 X組合は、
897 部活動の顧問を担当する教諭の待遇改善を議題とする団体交渉がこう着状態にあっ
898 たことから、
899 X組合に所属していない教職員にも理解と協力を求めていく必要があるとして、
900 職
901 員室において、
902 上記の待遇改善の必要性を訴えるビラを配布することとした。
903
904 当該ビラは、
905 上記
906 の内容を片面に印刷したA4サイズの紙1枚であった。
907
908 Zは、
909 令和6年1月18日の昼休みの時
910 間帯(教職員の休憩時間)に、
911 職員室内において、
912 職員室を訪れている生徒等がいないことを確
913 認した上で、
914 在席している教職員に対しては、
915 「組合の活動報告のビラです。
916
917 よろしくお願いし
918 ます。
919
920 」などと言いながら、
921 上記ビラを手渡し、
922 離席している教職員に対しては、
923 机上に上記ビ
924 ラを裏返して置くという方法により、
925 上記ビラの配布を行った。
926
927 Zが上記ビラの配布に要した時
928 間は約10分間であり、
929 昼休みの終了までに配布が完了した。
930
931
932 Aは、
933 Zが職員室内でビラを配布したとの報告を受け、
934 Zに事実確認をしたところ、
935 Zは事実
936 関係を認めた。
937
938 Aは、
939 Zに対し、
940 許可なく学校施設内においてビラを配布することは認められて
941 いないため、
942 Zの行為について、
943 処分を検討せざるを得ないと述べた。
944
945
946 Y学園は、
947 Zからの弁明の聴取等の就業規則所定の手続を経た上で、
948 令和6年3月15日、
949 Z
950
951 - 16 -
952
953 に対し、
954 上記ビラ配布の行為について、
955 就業規則第39条第5号に規定された懲戒事由に該当す
956 るとの理由から、
957 戒告とする懲戒処分をした。
958
959
960 【Y学園教職員就業規則(抜粋)】
961 第39条
962
963 教職員が次のいずれかに該当するときは、
964 情状に応じ、
965 戒告、
966 減給、
967 出勤停止、
968 降格、
969 諭
970
971 旨退職、
972 懲戒解雇に処する。
973
974
975 1〜4
976 5
977
978 (略)
979
980 許可なく学校の施設・設備を使用し、
981 又は学校施設内において、
982 集会を開き、
983 若しくは放送、
984 掲
985 示、
986 印刷物等の貼付、
987 配布等をしたとき。
988
989
990
991 6・7
992 8
993
994 (略)
995
996 その他前各号に準ずる程度の行為があったとき。
997
998
999
1000 第40条
1001
1002 前条の規定により懲戒を行うときは、
1003 当該教職員に対し、
1004 事前に弁明の機会を与える。
1005
1006
1007
1008 〔設問〕
1009 1
1010
1011 X組合がY学園による会議室の使用拒否について労働委員会で争う場合、
1012 どのような申立てを
1013 することができるか。
1014
1015 また、
1016 その申立ては認められるか。
1017
1018 検討すべき法律上の論点を挙げて論
1019 じなさい。
1020
1021 なお、
1022 X組合は、
1023 労働組合法第5条第1項が定める救済申立ての要件を満たしてい
1024 るものとする。
1025
1026
1027
1028 2
1029
1030 Zは、
1031 戒告処分が無効であるとして裁判所に訴えを提起した。
1032
1033 この戒告処分の有効性につい
1034 て、
1035 検討すべき法律上の論点を挙げて、
1036 あなたの見解を述べなさい。
1037
1038
1039
1040 - 17 -
1041
1042 - 18 -
1043
1044 論文式試験問題集[環
1045
1046 - 19 -
1047
1048 境
1049
1050 法]
1051
1052 [環
1053
1054 境
1055
1056 法]
1057
1058 次の設例を読んで、
1059 以下の小問に答えなさい。
1060
1061 なお、
1062 小問はいずれも独立したものである。
1063
1064
1065 【設例】
1066 A県内のB国立公園にある特別保護地区内には、
1067 国有林(ブナ林)があり、
1068 甲遊歩道が設置され
1069 ている。
1070
1071 Xが甲遊歩道を散策していたところ、
1072 甲遊歩道の入口から約500メートルの地点(以
1073 下、
1074 この地点を「本件現場」という。
1075
1076 )において、
1077 突然付近の国有林にあったブナの木が甲遊歩道
1078 上のXに向かって倒れてきたため(以下、
1079 倒木したブナの木を「本件ブナの木」という。
1080
1081 )、
1082 Xは
1083 これを避けようとしてその場で転倒し、
1084 足を骨折する等全治3か月の怪我をした(以下「本件事
1085 故」という。
1086
1087 )。
1088
1089
1090 本件現場の周辺地域は、
1091 国道に隣接して乙休憩所が設置され、
1092 同休憩所からブナ林内を2キロメ
1093 ートルほど進んだ特別保護地区内に、
1094 景観が良好なことで全国的にも知られている丙渓谷があっ
1095 た。
1096
1097 甲遊歩道は、
1098 乙休憩所から丙渓谷までをつなぐ通路として設置されたものであって、
1099 甲遊歩道
1100 には、
1101 約100メートルおきに休息のためのベンチが置かれていた。
1102
1103 また、
1104 本件ブナの木の近くに
1105 もベンチが置かれており、
1106 観光客が本件ブナの木周辺において散策ないし休息することが予定され
1107 ていた。
1108
1109 本件事故当時、
1110 甲遊歩道を通って丙渓谷を訪れる観光客は、
1111 年間約50万人程度であっ
1112 た。
1113
1114 甲遊歩道は、
1115 国有地を借り受けたA県が設置したものであり、
1116 A県が維持管理を行っていた。
1117
1118
1119 本件ブナの木は国有地上の天然木であり、
1120 本件事故前に、
1121 国とA県が毎年定期的に合同で実施して
1122 いる安全点検の際に、
1123 倒木のおそれがあるとは判定されていなかったが、
1124 本件事故後の調査により
1125 木の内部の腐食が進んでいたことが倒木の原因であると判明した。
1126
1127
1128 【小問】
1129
1130
1131 B国立公園内には「特別地域」のほかに「普通地域」がある。
1132
1133 自然公園法上、
1134 普通地域内にお
1135 いて、
1136 広告物を設置する行為につき、
1137 事前にどのような手続をとる必要があるか。
1138
1139 特別地域に
1140 おける上記行為に対する事前の手続的義務と対比しながら、
1141 根拠条文を挙げつつ、
1142 その手続の
1143 内容を説明しなさい。
1144
1145 併せて、
1146 その手続的義務に違反して当該行為に着手した者に対して、
1147 刑
1148 事的な制裁を科すために環境大臣が採れる措置について説明しなさい。
1149
1150
1151
1152
1153
1154 丙渓谷を訪れる観光客が年々増加傾向にあり、
1155 それに伴って良好な景観の維持が困難となり、
1156
1157 管理にも支障が生じてきている。
1158
1159 この場合に環境大臣が採り得る自然公園法上の措置を説明し
1160 なさい(ただし、
1161 当該措置を採るための手続については論じる必要はない。
1162
1163 )。
1164
1165
1166
1167
1168
1169 Xは、
1170 国及びA県に対し、
1171 損害賠償請求を検討している。
1172
1173 どのような法的構成が考えられる
1174 か、
1175 根拠条文や要件を挙げつつ説明しなさい(ただし、
1176 甲遊歩道の設置管理に係る費用を負担
1177 している観点からの責任については問わない。
1178
1179 )。
1180
1181
1182
1183
1184
1185 現時点において、
1186 環境大臣は、
1187 A県内に新たに国立公園を指定し、
1188 かつ、
1189 その区域内に特別地
1190 域を指定しようとしている。
1191
1192 当該特別地域予定区域内に民有地が存在する場合、
1193 その指定に当
1194 たって、
1195 所有者の同意が必要となるか。
1196
1197 なお、
1198 国立公園の指定の前段階となる候補地の選定に
1199 際しては、
1200 法規の性質を有しない要領が参考にされている。
1201
1202 【資料1】は以前に用いられてい
1203 たものであり、
1204 【資料2】は現在用いられているものである。
1205
1206 これらを踏まえつつ、
1207 土地所有
1208 者の同意の要否について、
1209 そのように考える理由とともに説明しなさい。
1210
1211
1212
1213 【資料1】
1214 自然公園選定要領(昭和27年9月)(抜粋)
1215
1216 - 20 -
1217
1218 自然公園は傑出した自然の風景地中、
1219 下の要件を具備するものにつき選定するものとする。
1220
1221
1222 (略)
1223 第2要件
1224
1225 土地
1226
1227 (略)
1228 社寺有地、
1229 私有地を包含する場合にあっては、
1230 土地の所有その他の関係者が特別地域の設定
1231 に協力的であること。
1232
1233
1234 (以下略)
1235 【資料2】
1236 国立公園及び国定公園の候補地の選定及び指定要領(平成25年5月)(抜粋)
1237 1
1238
1239 国立公園及び国定公園の候補地の選定
1240 国立公園及び国定公園の候補地は、
1241 全国的な観点から検討を行い、
1242 以下の要件を満たす地域を選
1243 定する。
1244
1245
1246
1247 (略)
1248
1249
1250 第5要件
1251
1252 地域社会との共存
1253
1254 候補地について、
1255 国立公園又は国定公園として保護及び利用することについて地域社会の理解
1256 が得られること。
1257
1258
1259 (以下略)
1260
1261 - 21 -
1262
1263 - 22 -
1264
1265 論文式試験問題集[国際関係法(公法系)]
1266
1267 - 23 -
1268
1269 [国際関係法(公法系)]
1270 A国とB国は、
1271 海を挟んで向かい合っている。
1272
1273 A国とB国との間の海には、
1274 無人島であるP島
1275 があり、
1276 同島はA国の領土であることが古くから国際的に広く認められていた。
1277
1278
1279 A国政府は、
1280 長年にわたる経済政策の失敗の結果、
1281 極端な財政難に陥り、
1282 国家財政の再建のため
1283 にP島をB国の利用に供して対価を得る方策を検討することになった。
1284
1285 A国政府とB国政府は、
1286 P
1287 島に関する条約を締結するための外交交渉を開始した。
1288
1289 その結果、
1290 A国とB国は、
1291 「P島の租借に
1292 関するA国とB国の間の条約」(以下「租借条約」という。
1293
1294 )に署名し、
1295 同条約はその後A国及び
1296 B国の議会の承認を得て発効した。
1297
1298 租借条約は、
1299 「B国は、
1300 P島をA国から本条約発効後50年間
1301 にわたり租借し、
1302 その間B国はP島を自由に利用することができる。
1303
1304 」(第1条)、
1305 「B国は、
1306 P
1307 島を利用する対価として、
1308 A国に対して毎年1億米ドルの支払を行う。
1309
1310 」(第2条)と規定してい
1311 た。
1312
1313 なお、
1314 A国とB国は、
1315 共に国際連合加盟国であり、
1316 条約法に関するウィーン条約及び海洋法に
1317 関する国際連合条約の当事国である。
1318
1319 以上の事実関係を前提として、
1320 以下の各設問に答えなさい。
1321
1322
1323 なお、
1324 各設問はそれぞれ独立したものであり、
1325 相互に関係はないものとする。
1326
1327
1328 〔設問1〕
1329 租借条約の規定に従って、
1330 B国がA国に対して最初の1億米ドルの支払を行うとともにP島の
1331 利用を開始してから1か月後に、
1332 突如として巨大地震が発生してP島全体が低潮時においても水中
1333 に没することとなった。
1334
1335 この場合、
1336 B国はA国に対してどのような主張を行うことができるか。
1337
1338 国
1339 際法上の根拠を挙げながら論じなさい。
1340
1341
1342 〔設問2〕
1343 租借条約の締結に関するAB両国政府間の外交交渉の過程で、
1344 A国政府はB国政府に対して、
1345
1346 P島には未開発の貴重な鉱物資源が埋蔵されている旨を公式に通告し、
1347 B国は、
1348 この情報に基づい
1349 て租借条約を締結した。
1350
1351 租借条約の発効後、
1352 B国はA国に対して毎年1億米ドルの支払を行い、
1353 別
1354 途P島において多額の費用を掛けて鉱物資源の探査を行ったが、
1355 貴重な鉱物資源は全く発見されな
1356 かった。
1357
1358 租借条約発効から3年が経過した時点で、
1359 A国政府がB国政府に通告したような鉱物資源
1360 はP島には埋蔵されていなかったことが明らかとなった。
1361
1362 この場合、
1363 B国はA国に対してどのよう
1364 な主張を行うことができるか。
1365
1366 国際法上の根拠を挙げながら論じなさい。
1367
1368
1369 〔設問3〕
1370 租借条約発効の5年後、
1371 A国政府の財政状況が更に悪化したため、
1372 A国はB国と再度外交交渉を
1373 行って租借条約を両国の合意に基づき終了させた上で、
1374 新たに「P島の主権移譲に関するA国とB
1375 国の間の条約」(以下「主権移譲条約」という。
1376
1377 )を締結し、
1378 同条約はその後A国及びB国の議会
1379 の承認を得て発効した。
1380
1381 主権移譲条約は、
1382 P島に関する主権をA国からB国に完全に移譲する対価
1383 として、
1384 B国がA国に100億米ドルを支払うことを規定していた。
1385
1386 B国がA国に100億米ドル
1387 の支払を行いP島に関する主権がA国からB国に完全に移譲された後、
1388 B国はP島を起点とする2
1389 00海里の排他的経済水域及び大陸棚を設定する国内法を制定した。
1390
1391 これに対して、
1392 B国と国境を
1393 接し海に面しているC国は、
1394 「P島は無人島であるため、
1395 P島を起点としてB国の排他的経済水域
1396 及び大陸棚を設定することは国際法に違反しており認められない。
1397
1398 」と主張して、
1399 B国に抗議し
1400 た。
1401
1402 C国のこのような主張に対して、
1403 B国はどのように反論できるか。
1404
1405 国際法上の根拠を挙げなが
1406 ら論じなさい。
1407
1408 なお、
1409 C国も国際連合加盟国であり、
1410 条約法に関するウィーン条約及び海洋法に関
1411 する国際連合条約の当事国である。
1412
1413
1414
1415 - 24 -
1416
1417 論文式試験問題集[国際関係法(私法系)]
1418
1419 - 25 -
1420
1421 [国際関係法(私法系)]
1422 甲国人A男と日本人B女は、
1423 Bがワーキング・ホリデー制度を利用して甲国に滞在していたときに同
1424 じ職場で知り合い、
1425 その後、
1426 甲国で適法に婚姻した。
1427
1428 AとBは、
1429 婚姻後5年ほど甲国で共同生活を送
1430 り、
1431 その間、
1432 二人の間に子C(甲国及び日本の重国籍)が生まれた。
1433
1434 その後、
1435 Aが日本の会社に転職す
1436 ることになり、
1437 A、
1438 B及びCは一緒に日本に移り住み、
1439 それ以降、
1440 日本に居住している。
1441
1442
1443 AとBは、
1444 乙国のリゾート地を気に入って長期の休暇の度に利用していたところ、
1445 Aは、
1446 日本に移り
1447 住んでから1年後に、
1448 不動産業者Y(乙国法人。
1449
1450 乙国に本店を有し、
1451 乙国以外には営業所や財産を一切
1452 有しておらず、
1453 乙国以外で事業等を行っていない。
1454
1455 )との間で、
1456 乙国のリゾート地の不動産αを購入す
1457 る契約を締結した。
1458
1459
1460 以上の事実を前提として、
1461 以下の設問に答えなさい。
1462
1463 なお、
1464 各問は独立した問いである。
1465
1466
1467 〔設問1〕
1468 Aは、
1469 不動産αを購入したものの、
1470 その後AとBが共に仕事で忙しくなり、
1471 乙国で長期の休暇を過ご
1472 すことが難しくなった。
1473
1474 そのため、
1475 Aは、
1476 不動産αを購入してから5年後、
1477 Yに対して不動産αの転売
1478 を相談したところ、
1479 Yから、
1480 転売ではなく期限付きの会員制施設利用権購入契約(1年のうち決められ
1481 た期間だけ対象施設の独占的利用権が付与される契約)の対象とすることを勧められ、
1482 Yに不動産αの
1483 運用を委託した。
1484
1485 Yは、
1486 乙国への旅行客向けに、
1487 乙国内の滞在型宿泊施設の会員制施設利用権の購入を
1488 勧めるセミナーを乙国内で定期的に開催していた。
1489
1490 乙国を初めて旅行で訪れた日本人X(日本に常居所
1491 ・住所を有する。
1492
1493 )は、
1494 宿泊していたホテルのロビーに貼ってあったYの当該セミナーのポスターに目
1495 を留めた。
1496
1497 Xは、
1498 それまでYの名前を聞いたこともなくYという会社を知らなかったが、
1499 セミナー会場
1500 がホテルのすぐ近くであることや参加者には無料のアフタヌーンティーが提供されるとの宣伝文句に興
1501 味をひかれ、
1502 セミナーに行ってみることにした。
1503
1504 Xは、
1505 セミナーの内容を聞き終わり、
1506 アフタヌーンテ
1507 ィーも満喫したため、
1508 Yの社員に「もう帰りたい。
1509
1510 」と告げた。
1511
1512 しかし、
1513 Xは、
1514 それまで愛想の良かっ
1515 たYの社員複数名から取り囲まれ、
1516 「契約を締結しないと帰さない。
1517
1518 」と言われたため困惑し、
1519 その場
1520 で、
1521 不動産αを毎年10月の1か月間独占的に利用することのできる会員制施設利用権購入契約(以下
1522 「本件契約」という。
1523
1524 )をYとの間で締結し、
1525 インターネットバンキングを利用して頭金100万円を
1526 乙国所在のY名義の銀行口座に振り込んで支払った。
1527
1528 なお、
1529 本件契約の契約書においては、
1530 紛争解決条
1531 項として、
1532 「P条:本契約は、
1533 乙国法に準拠し、
1534 乙国法に従って解釈されるものとする。
1535
1536 Q条:本契約
1537 に関する一切の紛争は、
1538 乙国裁判所を専属的合意管轄裁判所とする。
1539
1540 」と明記されていた。
1541
1542
1543 Xは、
1544 日本に帰ってから本件契約を締結したことを後悔し、
1545 契約締結後1か月が経った頃、
1546 本件契約
1547 に係る意思表示を取り消したいと思うようになった。
1548
1549 そこで、
1550 Xは、
1551 Yに対して、
1552 日本の消費者契約法
1553 第4条第3項第2号の適用及び同号に基づく本件契約に係る意思表示の取消しを主張した上で、
1554 支払済
1555 みの金銭の全額の返還を求める訴え(以下「本件訴え」という。
1556
1557 )を日本の裁判所に提起した。
1558
1559
1560 〔小問1〕
1561 本件訴えについて、
1562 Yは、
1563 「本件契約の契約書中のQ条に基づき乙国裁判所に専属的管轄合意
1564 がされているため、
1565 本件訴えは却下されるべきである。
1566
1567 」と主張している。
1568
1569 Yのこの主張は認めら
1570 れるかについて論じなさい。
1571
1572
1573 Yのの主張が認められないとした場合に、
1574 本件訴えについて、
1575 日本の裁判所の国際裁判管轄
1576 権が認められるかについて論じなさい。
1577
1578
1579 〔小問2〕
1580 Yは、
1581 本件訴えについて日本の裁判所の国際裁判管轄権を争うことなく応訴した。
1582
1583 この場合におい
1584 て、
1585 Xの日本法に基づく主張が認められるかについて、
1586 準拠法の決定過程を示しながら論じなさい。
1587
1588
1589
1590 - 26 -
1591
1592 〔設問2〕
1593 Aは、
1594 日本に移り住んでから15年後に死亡した。
1595
1596 Aは、
1597 遺言を作成しておらず、
1598 Aの遺産として残
1599 された財産は、
1600 乙国所在の不動産α、
1601 日本所在の動産及び日本の銀行に対する預金債権のみであったと
1602 ころ、
1603 BとCとの間でAの遺産をどのように分割するかについて争いが生じた。
1604
1605 Cは、
1606 日本の家庭裁判
1607 所に対し、
1608 Bを相手方として、
1609 遺産分割の調停を申し立てたが、
1610 調停事件は不成立により終了し、
1611 遺産
1612 分割の審判の申立てがあったものとみなされて、
1613 審判に移行した。
1614
1615 裁判所は、
1616 この遺産分割において、
1617
1618 動産及び銀行預金についてはB及びCの持分をそれぞれ2分の1ずつ、
1619 不動産αについてはBの持分を
1620 3分の1、
1621 Cの持分を3分の2とすることを前提として審判をした。
1622
1623 裁判所が前提とした持分の判断に
1624 ついて、
1625 準拠法の決定過程を示しながら説明しなさい。
1626
1627
1628 なお、
1629 甲国法には本問に関する範囲で、
1630 以下の規定があるものとする。
1631
1632
1633 【甲国法】
1634 @ 被相続人の直系卑属は以下の規定に従って相続人となる。
1635
1636
1637 第1号 親等が異なる者の間では、
1638 その近い者を先にする。
1639
1640
1641 第2号 親等が同じである者は、
1642 同順位で相続人となる。
1643
1644
1645 A 被相続人の配偶者は常に相続人となる。
1646
1647 この場合において、
1648 @の規定によって相続人となるべき者
1649 があるときは、
1650 その者と同順位とする。
1651
1652
1653 B 同順位の相続人が数人あるときは、
1654 その相続分は以下の規定に従う。
1655
1656
1657 第1号 直系卑属及び配偶者が相続人であるときは、
1658 直系卑属の相続分は3分の2とし、
1659 配偶者の相
1660 続分は3分の1とする。
1661
1662 (第2号以下略)
1663 C 相続については、
1664 被相続人の死亡時の常居所地法を適用する。
1665
1666 ただし、
1667 不動産の相続については、
1668
1669 不動産の所在地法を適用する。
1670
1671
1672
1673 - 27 -
1674
1675